フォトグラファー 七咲友梨

第1回 現在の活動について【前編】

ポートレイトを撮ること

Part.1of 6

「もっと自分を知ってほしい」「もっと作品を見てほしい」
クリエイターたちが抱くそんな思いを、自らの言葉で自由に発信してもらう場。
それが、連載企画“クリエイターズノート”です。

今回から複数回にわたって執筆してくれるのは、元女優でフォトグラファーの七咲友梨さん。
第1回では、写真という「言語」による自己紹介と、ポートレート撮影で大切にしている姿勢について綴ってくれました。

はじめまして!

みなさんこんにちは。
東京を拠点に地元の島根県と行ったり来たりしながら活動している、フォトグラファーの七咲友梨です。

いまこれを書いている渋谷の部屋の窓から、冬の間まるはだかだった街路樹に新芽が芽吹き始めているのが見えます。小さな黄緑色の葉っぱが頼りなさそうに揺れているのを見ると、自分と重なるものを感じます。クリエイティブの現場に入るといつも、上京してきた頃のように新しい世界に立つような気分になるのです。

これから数回にわたってクリエイティブを軸にした連載を続けます。多くの表現者たちは10代の頃に感じ考えたことを、大人になってからもずっとずっと考え続け、表現に昇華させているのではないでしょうか。
上京した当時は将来自分が役者として映画やテレビや舞台に出たり、いまのように写真に携わったり、東京と島根を往復する生活を始めるなんて想像もできませんでした。今みたいなライフスタイルが可能なのも、そうしたいと思うようになったのも、この時代だからこそだと思っています。

時代の変化と、個人的な変化。これからのことと、これまでのこと。他者と自分。仕事とプライベートワーク。そんなことを頭に思い浮かべながら少しずつ書いていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

おしゃべりな写真

まず初回の今回は、写真をダダダっとお見せいたします。

写真をたくさん見ると、撮った人がどんな人物なのか、なんとなく感じられることがあります。活動するフィールド、目線や気分、言いたいこと、何に反応しているのか、どんなものが好きなのか……。写真という「言語」で、自分のことを伝えてみようと思います。

・Left
series:hito hito
Model:玉井祐子 Yuko Tamai(Gunn’s)
Stylist:梅田一秀 Kazuhide Umeda
Hair & Make:高徳洋史 Hiroshi Takatoku(Lyon)
・Right
mother

GOETHE(2016年12月号)
Model:木村文乃 Fumino Kimura(トライストーン・エンタテイメント)

series:JIKKA SCENES

・Left
GOETHE(2017年2月号)
Model:新木優子 Yuko Araki(スターダストプロモーション)
・Right
別冊FLIX(2016年3月号増刊)
Model:広瀬すず Suzu Hirose(フォスター・プラス)

series:JIKKA SCENES

series:hito hito
Model:愛羅 Aira(Gunn’s)
Stylist:梅田一秀 Kazuhide Umeda
Hair & Make:高徳洋史 Hiroshi Takatoku(Lyon)

Model:春菜 メロディー Haruna Melody(ADESSO)

SILLY
Model:yahyel

IWAMI driver’s map

佐渡島 七浦海岸

mother

mother

IWAMI driver’s map

series:JIKKA SCENES

series:JIKKA SCENES

 

投げかけてみる、ということ

ポートレイトを撮る場合、短い撮影時間だったとしても、被写体と深くコミットする時間が一瞬でももてるようにしたいなと思っています。ただシャッターをきるだけで終わってしまった撮影の帰り道は、なんだかさびしくて泣きたくなってしまうのです。

バタバタとしている現場だと、よい表情が自然に出てくるのを待つだけの時間はありません。システマチックにただ撮るだけだと発見がないし驚きがなくて、自分も被写体もまるでロボットのように感じてしまいます。

写真には被写体だけではなく、撮影者の気分や感覚も写り込み、それは見る人にもどこか伝わることがあるように感じます。だからこそ、撮っている時の自分の気分や感覚も、わたしは大事にしています。
どれだけタイトな条件だとしても、こちらから何かを投げかければ反応はあります。演技でいうと、リアクションです。

「よいポートレイトにはその人らしさが写っている」とよく言われます。「その人らしさ」というものがどこにあるのかは分からないけれど、リアクションや動き、イマジネーションにはその人のその時の状態が浮き出やすいので、そこに個性を感じられるのではないかと思っています。本で読んだ知識ですが、リチャード・アヴェドンも同じような手法を使うことがあったようです。

たとえば、女優の夏帆さんの時は忘れられない撮影のひとつです。たった10分が長く豊かに感じる撮影でした。

GOETHE(2016年2月号)
Model:夏帆 Kaho(スターダストプロモーション)

撮影前に休憩時間の夏帆さんのメイクルームに伺い、彼女とお話する時間をつくりました。わたしは「役者」の夏帆さんとセッションしてみたかったので、簡単な設定を設けることにしました。「あなたはまだ小さな小さな、捨て猫。これまではあったかいおうちに住んでいて、外にはほとんど出たこのとない子です」

メイクルームからでてきた夏帆さんを見た瞬間「あ、役をまとってる」と、気づきました。その夏帆さんを見たわたしには、茶色のバックペーパーと立てたカポックが、ダンボールの家のように見えました。すかさず「これはダンボールのおうちだよ。いまの、あなたのおうち」とわたしは言いました。10分間のショータイムの始まりです。

夏帆さんは役の設定の中で自由に動いてくれました。半分イマジネーションの世界に入ったわたしたちは目が合うだけで充分。言葉なんかなくても、深いコミュニケーションがとれました。この撮影を通して、夏帆さんのイマジネーションの豊かさ、柔軟性、役者としての意志を知りました。

投げかけることがいつもうまくいくわけではないし、担当の編集さんの理解とつくるべき方向が一致してこそだけれど、なるべく何かしらトライするようにしています。

 

第2回につづく。

    UPDATE:
    クリエイターズノート
    フォトグラファー
    七咲友梨

    七咲 友梨 Yuri Nanasaki

    七咲友梨(ななさき・ゆり)
    フォトグラファー。島根県出身、東京在住。
    リアリズム演技を学び、役者として映画、ドラマ、舞台、CMなどで活動。その後、写真家・横木安良夫氏に師事し、独立。演劇経験で培った手法を活かし被写体に向き合う。ポートレイトを中心に雑誌、広告、書籍などの分野で活動。CM、ミュージックビデオなど映像カメラマンも手がける。また写真集、写真展など作品発表も行う。
    2012年に写真集『No where, but here』(ShINC.BOOKS/Bis.)を刊行。