職種辞典

職業欄になんて書けばよいの?【アートディレクター編】

「アートディレクターって、何をやっているの?」と聞かれて困ってしまった経験はありませんか?同じ業界の人間になら説明できたとしても、自分の子どもに同じ質問をされたらどう説明すれば理解してもらえるでしょうか。職業欄に、そのまま「アートディレクター」と書いていいものかどうかも悩ましいはず。アートディレクターの仕事内容を、誰にでも分かる平易な言葉で説明することは案外難しいのではないでしょうか。

今回は、アートディレクターについて、どういう仕事なのか、そして仕事上ではどのような役割を求められるかについてできる限り分かりやすく解説します。お子さんや他業界の方に質問されても答えられるようまとめていますのでぜひご一読ください。

アートディレクターって、どんな仕事?

  • ひと言で言えば「デザインを創造する仕事」
  • クライアントへのヒアリング力が問われる
  • アートディレクターは、デザイン部門の統括者

アートディレクターに求められる役割とは

  • 卓越したデザイン力と新技術の探求
  • コミュニケーション能力を活かした提案
  • 「クオリティ」と「スタッフ」の管理
  • 新人スタッフの育成

職業欄にはなんて書く?-職業欄の書き方-アートディレクター編-

職業を聞かれるとどう説明する?

アートディレクターの仕事と求められる役割、職業欄への書き方から職業を聞かれたときの説明も細かくお話していきます。
また、「アートディレクターって何?」と聞かれてお困りのアートディレクターもぜひご一読くださいね。

アートディレクターって、どんな仕事?

まず、アートディレクターってどういう仕事をしているのかを順番に見ていきましょう。深く掘り下げていると、技術面ばかりではない様々な仕事が浮かび上がってきます。

ひと言で言えば「デザインを創造する仕事」

例えば、あるクライアント(企業)の広告を制作するとします。企業の要望に沿って「広告のコンセプト」を練り上げるのがディレクターで、コンセプトを表現する具体的なデザインをするのがデザイナー(グラフィックデザイナーともいいます)です。アートディレクターは、そのデザイナーの一人でもあり、かつクオリティチェックから納品までの進行管理を行います。そしてデザインがコンセプトをしっかりと表現できているか、伝えるべき人に伝わるか、広告の目標を達成できるものに仕上がっているかどうか…それらすべてを管理する責任者なのです。デザイナーのトップに位置する人ということですね。

クライアントへのヒアリング力が問われる

広告制作の流れとしては、まずクライアントとディレクターとで広告のコンセプトや、広告展開などの戦略を考えます。そのあとにアートディレクターも打ち合わせに入り実際にどういうカタチにするのかデザインの方向性を決めます。この際に、アートディレクターは過去の豊富な経験をもとに、クライアントが欲しているイメージをカタチにして提案しなければなりません。ポスターのサイズや、写真でサプライズするのか、キャッチコピーで消費者からインパクトを取る狙いにするのか、などです。ここでアートディレクターに問われるのが、広告コンセプトを読み解く力です。アートディレクターはデザインのプロフェッショナルなので、制作アイデアの方法論は数多く持っています。しかし、クライアントはその企業の製品作りに関しては専門家でも、広告という分野では素人なのです。広告したいその製品のイメージは頭のなかで想像できても、それをエディターやアートディレクターには仔細な説明はできないことがほとんどです。そのため、クライアントの要望を聞くときは、どんな広告を作りたいとイメージしてるのか、何を大事にした広告にしたいのかを掴み取ろうという姿勢が大切です。そして「そういうイメージをお持ちであるなら、こういうデザイン表現はどうでしょうか」と提案できるのです。広告におけるコンセプトとは建築物でいう基礎土台と同じで、コンセプトをきっちり設計しないと、いざ広告が完成してもクライアントが気に入らないという祖語が生じてしまいます。クライアントの言葉を聞く、それを受けて提案する。この反復作業を繰り返す実直さが必要です。

アートディレクターは、デザイン部門の統括者

デザインコンセプトが固まったら実際に制作作業に入ります。広告の規模にもよりますが、一人ですべて作業することはあまりなく、数人のスタッフからなるグループで行うことがほとんどです。ここで大事なのは各スタッフへ広告のコンセプトを正確に伝えて、統一性があるクオリティの高いものを作らなければならないことです。アートディレクターは、まず広告デザインの核となるビジュアルを制作した後、そのビジュアルを見本としてスタッフに説明します。広告デザインの核とはコンセプトを象徴するキーワードや、それをシンボリックにしたビジュアルのことです。クライアントの要望をデザインスタッフに共有させるのもアートディレクターの重要な仕事です。あとはスタッフが実作業をして仕上がったものをアートディレクターはすべてチェックして、コンセプトからズレていれば追加修正を命じたりします。また納期を守るために制作進行のスケジュール管理もやるべきことです。
最後は納品ですが、出来上がった制作物を見たディレクターやクライアントから修正の指示が来ることもあり、その場合は、何がいけないのかをよく聞いて、その意見の理解したうえで再修正を行うと、一連の業務が終了します。
上記は広告だけの例ではなく、出版からウェブまで、メディアのほとんどは同様のプロセスで生み出されます。仕事は多岐に及び激務なことが多いですが、一般の消費者から最も見られる「デザイン」を創造するアートディレクターは、華やかな仕事ともいえますね。

アートディレクターに求められる役割とは?

メディア業界でのアートディレクターとは、一般的にはデザイン職の責任者という意味で捉えられています。つまり、新人は「デザイナー」としてスタートし、経験を積みベテランになって大きな仕事を任せられるようになると「アートディレクター職」に昇進できるわけです。そこでアートディレクターに求められる役割を4つに分けて解説します。

卓越したデザイン力と新技術の探求

これはとてもあたり前のようですが、数多いるデザイナーの中からデザインする力を認められるのは難しいことです。独自性の高いデザインができる、ということになるのですが、Adobeなどのデザインソフトも充実したパソコン時代に入ると尚更にオリジナル色を出すのは困難になってきました。本来的にデザインは、クリエイティブ職では珍しく学ぶべきことが多い分野で、それは四年生大学にデザイン学部があることでも分かります。デザインの基礎では、色や画像が人間の視覚に与える影響など学問的な考察から勉強します。もちろん独学&実社会での仕事をしながら上達するデザイナーもいますが、それだけ人材の層が厚いのがデザイナー世界の特徴です。アートディレクターになるには、切磋琢磨するデザイン集団の中で抜きんでる必要があります。それから、Web時代前まではあくまでも紙媒体が主流でしたが、現在はWebが大きなメディアに位置する時代です。同じデザイナーであってもWebサイトを理解している「Webデザイナー」は別称で呼ばれおり、今後はますますスマートフォンの画面で見せるデザインも重要になっていくでしょう。Webデザイナーの中にも、アートディレクターはいます。これからのアートディレクターは、デザイン力だけではなく、Webなどの新技術に対しても好奇心を持って取り組んでいく姿勢も求められています。

コミュニケーション能力を活かした提案

デザインの仕事には必ずクライアントがいます。デザイナーは発注者の受け手側です。クライアントの要望をデザインするシンプルな仕事です。アートディレクターはデザイン面に関してのクライアントとの窓口となります。発注者側のイメージや要望をきれいにすくい上げるためには、やはり度重なる打ち合わせや、電話、メールでのやり取りを通じて、クライアントの了解を得るまで密に連絡をすることが最善でしょう。コミュニケーションがうまくできなければクライアントから不安がられるかもしれないリスクもあります。人間心理として、不安を感じている人からのデザイン提案だと、そのデザイン自体に不信感を持たれたりしてしまいます。アートディレクターに求められるコミュニケーション能力とは、クライアントの創作したい気持ちを積極的に感じて、それをデザインワードで説明し、写真や似た方向性の制作物などを参考例に分かりやすいビジュアル提案を面倒がらずに行うことです。その理由は、デザインの仕事は残念ながら口頭だけで完全に意図を伝えることは不可能だからです。また、制作過程でよく起こることにクライアントの要望追加や、完成したデザインに対しての修正依頼があります。デザイン側からすると要望が過大な場合はすべてを反映すると時間と製作費のコストが掛かりすぎる問題が生まれます。不利益を避けるためにはクライアントの要望をよく聞いて真意を見抜き、最小の労力で制作物の改善に留めることがベストです。アートディレクターは、クライアントに対して双方の要件を満たす落としどころを提案する能力が要求されます。概して言えばデザインは、一般の仕事以上にコミュニケーション能力が成果を左右するといえるでしょう。

「クオリティ」と「スタッフ」の管理

アートディレクターは数人から数十人のデザインスタッフをまとめる管理職と言えます。
クライアントから受けた仕事は、スタッフの中で分業とするため制作物のクオリティ管理も大切な業務になります。デザインは感覚で作るものゆえに、クオリティを定規や物差しで測ったりできません。当然、スタッフたちの実力にも差があります。そのため制作過程で細目にチェックする必要があります。基本的な手順では、まずスタッフ全員と制作物に対するコンセプトを共有し、それぞれが下書き(ラフといいます)をします。その段階でアートディレクターに確認をしてもらいOKが出れば次の過程に入ります。デザイン制作の作業は意外と時間が掛かります。好きな作品を作っている訳ではなく、クライアントの要望に叶う商品を作っているためです。デザインスタッフ側からも、何か疑問点があれば、どんなに小さいことでもアートディレクターに確認を求めてきます。アートディレクターは、その都度スタッフと打ち合わせますが、それも同一方向性のクオリティを保つための大事な仕事です。もし、間違った方向性で作成していたモノがあった場合は、やり直しのための時間と労力は膨大になるためです。そして制作の締め切りに合わせたスケジュールの管理も大切な仕事です。クリエイティブ系の職場には、どれだけ時間が掛かっても良いものを作ることに情熱を燃やす人が多いという特徴があります。徹夜や週末の出勤を自ら好んでやります。スタッフの意思を尊重することも必要ですが過剰な行動は、会社としてはNGな場合も多々あります。アートディレクターは、そのようなスタッフの仕事のやり方にも目を配らなければなりません。デザインの仕事といえども、基本的には早めに仕上げて、早めにアートディレクターにチェックを受けて、早めにクライアントに提出することが美しい仕事となります。

新人スタッフの育成

意外とアートディレクターの仕事範囲で見落としがちなのが、新人スタッフの育成です。クリエイティブな業界は人材の流動性が高く、デザイナーは一定のスキルを得たら別会社へステップアップしていくことはよくあることです。そのため、ベテランばかりがそろったグループは少なく、常に新人スタッフが含まれている可能性が高いです。デザインは自身の感覚をカタチにする仕事のため、成長には時間が掛かるうえに、成長速度は目に見えるものではありません。一人前になるまで3年間ぐらい掛かるのは普通です。アートディレクターは新人スタッフのキャパシティを考えながら仕事の量を調整し、仕事ぶりを細かくチェックしながら、時には厳しく、時にはやさしく指導します。デザイン=表現は感覚であり、新人は指導を受けるときに能力を否定されたような気になるので、かなり気を使って言葉を選びながら丁寧にアドバイスしていかなければなりません。新人のデザインが上達するためには、クライアントと接する場合とはまた別のコミュニケーション能力を磨く必要があります。そしてこれもアートディレクターにとっては、自分の時間を割いて、かなりの熱量を持ってする仕事になります。こういう地道なルーティンワークもアートディレクターに求められる役割です。
職場の生産効率を上げるには各スタッフのパフォーマンスを上げることしかできません。アートディレクターはスタッフ各人に見合った適切な仕事量を配分したり、スキルアップの目標を立てさせたりして、デザイン部門を全体として俯瞰しています。仕事量に対して人員が足りてなければ別会社やフリーのデザイナーに仕事を発注したりもします。自分が統括してる人員のキャパシティを推し量って全体の仕事を調整していく必要があります。そして、スタッフ人員と仕事量、クオリティとの管理を合わせたものは「コスト意識が高い」ことにつながります。デザインは、デザイナーが制作の仕上がりにこだわりすぎると、時間と制作費(おもに人件費)を際限なく使える仕事です。これは現在の景況感があまり高くない時代においては、会社にとって最優先である利益が残せません。パソコンのデザインソフトが高性能になるほどデザイン単価も下がってきているのが実情です。優秀なアートディレクターほどコスト意識は高くて、クライアントの要件を満たす最短距離のゴールを目指して知恵を絞っています。

職業欄にはなんて書く?-職業欄の書き方-アートディレクター編-

ここまでの説明で、アートディレクターはこれからもますます必要とされる肩書きだということがお分かり頂けたのではないでしょうか。ここからは、実際にアートディレクターをやっていて、何らかの理由で職業欄に自分の仕事を書かなければならなくなった場合はどう記述すればいいのかを説明します。
特に税務署に提出する開業届など、公的な機関に提出する書類の職業欄について参考にするとよいと紹介されているものに、日本政府が定めて公的な職業分類があります。この公的な職業分類は2種類あり、それぞれ改定時期も違います。まずは2つの職業分類で、アートディレクターに当たる職種がどのように分類されているかをご紹介します。
1つめ、総務省が制定している総務省の日本標準職業分類(http://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/shokgyou/21index.htm)です。
こちらは、平成21年12月統計基準なっていて、アートディレクターが該当する職業分類はどれか確認すると「デザイナー」が該当するように見受けられます。
2つめは、厚生労働省が制定している厚生労働省編職業分類(https://www.hellowork.go.jp/info/mhlw_job_dictionary.html)でこちらは平成23年に改訂されていて総務省の職業分類よりも2年ほど新しいですね。厚生労働省篇職業分類でアートディレクターが該当しそうな職業分類を探すと、「B 専門的・技術的職業」の「24 その他の専門的職業」の細分類「249-99 他に分類されないその他の専門的職業」にアートディレクターが該当例として紹介されています。今後新たに分類分けされていくことになると思いますが、残念ながら現時点では、明確な分類が存在していないようです。
この結果からも、一般にアートディレクターという仕事自体、まだ世の中では珍しい部類であることがわかります。
ただし、「アートディレクター」という名前からデザイン能力が非常に秀でた人、とふつうの人は頭に思い浮べているはずです。その為、書類等にも「アートディレクター」と記述して問題ないかと思います。

職業を聞かれるとどう説明する?

「アートディレクターとはどんな仕事なの?」と、クリエイティブ系の仕事をまったく知らない親族や友人から聞かれたとき、どう返答してよいのか戸惑った経験を持つ人は多いはず。それは、仕事内容の要素がありすぎて短い言葉が思いつかないからです。そこでスマートな答え方をするために前提として押さえておきたいことは、一般の人はクリエイティブ系の仕事が「分業」で成り立っていることを知らないということです。そのため手始めに分業であることを解説すべきです。
広告のポスターを例にすると、「コンセプトを考えてポスター制作の指揮を執るのがディレクター。写真を撮るのはカメラマン、キャッチコピーはコピーライターが考えて、文章を書くのはライターです。そして写真、文、キャッチコピーを素材に使ってデザインをするのがデザイナーなんだよ」という流れです。その次にはじめて「アートディレクターは、デザインチームのトップの人を指すんだ」という順番です。アートディレクター>デザイナーという関係を補足で伝えるとより分かりやすいですね。
また、「デザイン」という単語はわりと漠然とした言葉です。そこで食品パッケージ等を例にとって、「おいしそうなパッケージだと箱買いをするよね。消費者の『おいしそう』な感覚を生み出す箱を作るのがデザイン。具体的には箱の色を決めたり、製品名のフォントをうまそうなカタチに作ったり、写真をお店の陳列棚でも目立つように配置したりとかの工夫をしている」という説明です。さらに、箱買いという言葉があるようにデザインで製品の売り上げも左右されるから、マーケットの反応もダイレクトに伝わってやりがいのある仕事であることを付け加えれば、アートディレクターの一連の流れがよく理解できるのではないでしょうか。
デザインの技術論よりも、デザインと一般社会が触れ合っている部分の説明に的を絞った方が、クリエイティブ業界に馴染みのない方にはわかりやすいものとなります。

まとめ

今回は、アートディレクターの仕事と役割の解説と、職業欄の書き方や仕事を聞かれたときの説明の仕方をお話ししました。職業欄の書き方と、仕事について聞かれた場合の説明について、最後にもう一度おさらいをしておきましょう。

職業欄の書き方

書類の書き方に定めがないなら「アートディレクター」と書いてもOK

仕事について聞かれた場合の説明

クリエイティブ系の仕事が「分業」で成り立っていることを説明
具体的な商品などを例に仕事の内容を伝える
アートディレクター>デザイナーという関係

本記事を読んで、アートディレクターの仕事とは何かを改めて確認して頂ければ幸いです。

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