コピーライター/クリエイティブディレクター×イラストレーター コモリ夫妻

“手づくり”に囲まれた、あたたかい日常【後編】

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クリエイティブな発想は、クリエイティブな暮らしから生まれる――。
シリーズ「クリエイターの暮らし」では、つくり手たちのクリエイティビティにあふれる住まいや日常に迫ります。

記念すべき初回にご登場いただくのは、ものづくりを楽しむクリエイターユニットのコモリ夫妻。本企画では、お2人のこだわりが詰まったご自宅やライフスタイルを前後編の2回に分け、たっぷりとご紹介します。

後編では、DIYへのこだわりや始めたきっかけ、DIYを通じてどんな暮らしを送っていきたいかなどについて、ご主人のコモリケイさんにお話を伺いました。

DIYを始めたきっかけ

“手づくり”は自分たちの血が通っていくようで心地いい

ワークスペース周りのアイテムをDIYするなど、自身で行うものづくりにこだわるコモリさん。DIYを始める前からインテリアにこだわりを持っていたそうで、独身の頃も蛍光灯を全て白熱球のライトに交換したり、子ども時代に憧れていたシーリングファンを取り付けたりと、工夫していたそうです。ほかにも壁紙をホチキス止めで変えたり、床に板を張ったり、アンティークの額や牛の頭蓋骨のオブジェを壁に掛けたりと、賃貸物件でも現状復帰できる範囲で理想とする空間をつくろうとしていました。
手づくりにこだわる理由は「クリエイターだから」とコモリさんは話してくれました。ものづくりそのものが好きだからこそ、1つのジャンルに縛られず、自分たちがいいと思ったものをどんどんつくるのだそうです。「自分たちが設計した家を、さらに自分たちでカスタマイズしていく。家という大きな入れ物に自分たちの血が通っていくようで心地いいんです」とコモリさんは語ってくれました。

そんなコモリさん行きつけのお店は、文京区千駄木にある古道具屋「Negla(ネグラ)」。戦前・戦後の日本の家具や雑貨を主に扱うお店です。個性的な品ぞろえや、日本で大切に使われてきた味のある家具を受け継いでいこうとする姿勢が気に入っているのだといいます。 

今では息子さんの玩具や家具製作を行うほどDIY熱心なコモリさんですが、DIYを始めたきっかけはこのお店にありました。Neglaの女店主が自ら細腕で傷んだ家具を修理していると知り、カッコいいなと思うと同時に「工具と技術力さえあれば腕力がなくてもできるのか!」と興味を持ったのだそうです。
その後、女店主に「ケイくんならつくれるんじゃない?」と言われ、背中を押されるようにしてDIYの道に没入していったといいます。

古道具 ネグラ
113-0022 東京都文京区千駄木2-39-5富士マンション102号
URL:http://www.negla.net/
TEL:050-3417-3766
MAIL:kajinoriko@gmail.com

家具づくりはプランニングが重要

家具づくりは、まずコモリさんが自ら発案するか、奥さんからのオーダーで始まります。それから1~2週間かけてコモリさんがリサーチし、設計。その後は奥さんと一緒にホームセンターに向かい、必要な資材を買いそろえます。
「プランニングが甘いままホームセンターに行くと買い物に時間がかかったり、材料が足りなくなったりするので、行く前に必ず何ミリの材木をどれだけ買うかを決めて、全て資料に落とし込んでいます」。
奥さんに息子さんの面倒を見てもらっている間に1人で作業する日もあれば、奥さんと一緒に作業する日もあるというコモリさん。たまに息子さんが興味深そうにのぞきにくるので、危険に注意しながら、手伝ってもらうこともあるのだそう。「もう少し大きくなって、一緒にものづくりができたら楽しいでしょうね」。

自分たちの“血の通った暮らし”をしていきたい

コモリさんが主に家具や内装づくり、道具・おもちゃの修理を行う「住」の部分を担い、奥さんが食事、衣服、バッグなどをつくる「衣」「食」を担っているというコモリ夫妻。これからは、生活するなかで既製品に頼る比重を少しずつ減らしていく予定だそうです。家電や息子さんのおもちゃが壊れても、直せるものであれば自分で修理して、「愛着のあるものを大切に使いながら、自分たちの血が通った暮らしをしていきたい」とコモリさんは考えています。

 

息子のためのDIYおもちゃ

DIYおもちゃの角の丸さは愛情の証

奥さんお手製のテディベアをもらって喜ぶ息子さんの姿を見て、自分も息子を喜ばせたいと思うようになったコモリさん。それからは手づくりのおもちゃをプレゼントするようになりました。これまでにつくったのは、乗れる足けり車や自分で上れる子ども椅子など。「それまでは趣味として行っていたDIYが、子育ての一部になりました」とコモリさんはいいます。

おもちゃをつくる際は、“いかにも手づくり”という安っぽさが出ないように心がけているそうです。目指しているのは、市販品に負けず、友だちにも自慢できるようなクオリティとデザイン性の高さを持ったおもちゃ。息子さんのけが防止のためおもちゃにヤスリ掛けを施すことも忘れません。「角の丸さが愛情の証です(笑)」とコモリさんは語ります。

足けり車を息子さんにプレゼントしてから1年近くになるそうですが、息子さんはほぼ毎日遊んでいるとのこと。「我が家に来た人によく自慢してますね。ほかの子どもに手荒な扱いを受けるとすごく悲しい顔をします。あとはぼくが修理してあげたおもちゃも、『ここをとーたんが直してくれたんだ』って、たどたどしい日本語でしきりにほかの人に説明するんですよ」。

夫婦合作! 手づくりのおままごとセット

コモリ夫妻が新たに息子さんのためにDIYしたおもちゃは、マジックテープでザクッと切れるおままごとセット。コモリさんは木材を加工して包丁とまな板を、裁縫の得意な奥さんは野菜や目玉焼きをつくりました。父と母の愛情がたっぷり詰まった手づくりのおもちゃに息子さんは大喜び。

つくるきっかけとなったのは、コモリさんが子どもの頃に使っていたおままごとセットに触れた息子さんが、市販のおままごとセットを欲しがるようになったことでした。「もともと妻がさらしおんぶで料理するところを見せたり、料理をつくるのを手伝ってもらってたりしたこともあって、ままごとに興味を持ち始めたみたいです」。

包丁とまな板の素材には板材を使用。包丁の刃先はちゃんとマジックテープ式の野菜を切れるようにとがらせ、まな板には息子さんのイニシャルと魚のイラストを添えました。もちろん、けがをすることのないように、ハンマーやヤスリで念入りに角がとられています。

野菜の断面にはマグネットを使う方法もありましたが、切ったときの感触を楽しんでもらうためにマジックテープを使用。緑のフェルトでつくられた大根の葉や茎は生え際までリアルに表現されていて、既製品と見紛うクオリティの高さです。


自慢の愛車“マルク”

時代を逆行するようにレトロになってほしい

コモリさんにとってもう1人の家族とも言えるのが、DIYを施した愛車の“マルク”。2000年頃にダイハツが販売していたミラジーノというレトロカーを模した現代車です。「ミラジーノはヴィンテージではなくあくまで現代車。それに自分が手を入れていくことで、どんどん時間を逆行するようにレトロになっていってほしいんです」。そんな想いを込めて、愛車は“クルマ”の逆で“マルク”と名づけられました。

ミラジーノとの出会いは2013年の夏。もともと車を買いたいと思っていた夫妻は、新築を建ててて車の置き場を確保した翌月にマルクを我が家に迎えたそう。「ミラジーノを買うことはずいぶん前から決めていました」。家の周囲の道路が広くないことも考慮して軽自動車を選んだそうですが、ミラジーノを選んだ最大の理由は“見た目”でした。「ミラジーノはダイハツ・コンパーノという1960年代の旧車のデザインを復刻した車です。ぼくはレトロな車が大好きなんです。今はスタイリッシュで機能的なデザインの車が多いですが、ミラジーノの愛嬌あるデザインに一目惚れしました」。

“マルク”はコモリ家の立派な一員

幼い頃に海外ドラマ『ナイトライダー』やステーヴン・キング原作の映画『クリスティーン』といった“意志を持つ車の物語”にたくさん触れてきたというコモリさん。「もともとぼくはモノに魂があると思うタイプなので、昔からバイクとかカメラとか、愛用アイテムは家族のように可愛がっていました。愛情を注ぎながら、もっと自分の血を通わせたくて改造し、改造するとますます愛着が湧きます」。

奥さんも息子さんもマルクが大好きだといいます。特に息子さんはお父さまに似てレトロカーが大好き。コモリさんがマルクを改造するたびに、「うおーかっこいい!」と喜んでくれるのだそうです。お散歩から帰ってきた息子さんが、家の前に停めてあるマルクのボンネットにギューッと抱きつく姿もよく目にするといいます。
息子さんの誕生日には、毎年手づくりの品をプレゼントしているコモリ夫妻。1歳の誕生日には奥さんと2人でマルクを題材にした絵本を制作し、製本してプレゼントしました。

「マルクがぶろろ」作・こもり けい(iTunesで無料ダウンロードが可能)

世界で一台だけの存在に

愛車の自慢ポイントは、「外見は元からクラシックでしたが、内装もだんだんと現代の軽自動車離れしてきているところ」と語るコモリさん。コモリ夫妻のブログにはミラジーノのDIY記事が多く投稿されています。
ミラジーノ乗りにはDIYer(※)も多く、コモリさんと同様にすてきなアレンジを加えているユーザーがたくさん存在するそうです。コモリさんいわく、「上には上がいて、マルクはまだ進化の途上」とのことですが、手を加えることでマルクは着実に“世界で一台だけの存在”になってきているのだといいます。そんな愛車を妻や息子も愛してくれているのがコモリさんの自慢だと、コモリさんは嬉しそうに語りました。
※DIYer(ディーアイワイヤー)……DIY愛好者のこと。

コモリさんにとってのDIYのゴールは、家じゅうを手づくりの品で満たすこと。それは車についても同じで、「いつしか家や車とも血がつながってしまいそうですね(笑)」とコモリさんは語ります。コモリ家にあるモノともっと“真の家族”になるため、コモリさんは気が済むまでものづくりを続けていくのだそうです。

 

コモリ流・DIYのリカバリー術

リカバリーはアクセントを足すイメージ

DIYは独学で、つくりたいものが決まったら工具の使い方や加工の仕方を一工程ずつ調べて習得するというコモリさん。しかし、時には下調べが足りずに失敗することもあるといいます。
例えば家に関するDIYだと、ステインを木材に着色した際に、下地処理が不十分でムラが出てしまったことがあったそうです。しかし、成功した部分は再現不可能なほど美しい色をしていたので、塗り直すのではなく、ムラになった部分をコンロで大胆にあぶって焦がし、ダメージ加工を加えることでリカバリーしました。「“シャビー&シック”のテクスチャとしての美しさが好きなんです。使い古され、経年劣化して出た味のようなものにはあたたかさが感じられます」そんなテクスチャを出すために、試行錯誤を繰り返しています。


また、車に関するDIYでも、ドアトリム(ドアの内装の布地部分)にレザーを貼った際に、スプレー糊の選定を間違えて革が浮いてシワになってしまったことがあったそうです。強力な糊で貼り直しつつ、特にシワがひどい箇所は、奥さんに縫ってもらった同じ生地のポケットを真鍮の割れピンで固定しました。これは革張りのアンティーク家具にヒントを得ての工夫でした。リカバリーをするときは、ただ補修するのではなく、デザイン的なアクセントを足すイメージで行うよう意識しており、そうすることでよりオリジナリティが出ることもあるのだそうです。 

ひたすらネットで実現方法を調べる

DIYを行う際は誰かの作品をまねることはしません。あくまで自分のつくりたいものが頭のなかにあり、常に試行錯誤しながら実現方法を模索しているとのことでした。
「実現するためには、ひたすらネットで調べます。失敗したくないのと、作業時間が息子の就寝中に限られているということもあり、かなり先回りした情報収集をしています」。頭のなかに具体的な手順書ができ、その通りに作業すれば失敗しないと思える程度までとことん調べることが重要なのだといいます。

また、コモリさんはモノの仕組みをあれこれ考えることが好きだそうです。「紐を引っ張ったら窓が開くとか、遠くて手が届かない電気のスイッチが入るとか、既製品ではあり得ないほどコンパクトに折りたためるテーブルとか、いろんなモノの仕組みを真面目に考えるのが好きです。普通だったら面倒くさく感じてしまうのかもしれませんが(笑)」
自らの頭を働かせ、創意工夫で新しいものを生み出そうとするクリエイターならではの能力が、DIY活動でも生かされているのかもしれません。

 

コモリ家の未来

これからやりたいDIY

コモリさんにはこれからやりたいDIYがいくつかあります。その1つは息子さんの部屋づくり。木製のパレット(※)を使って底上げした床にベッドを収納し、ガス管を使ったハンガーラックを飾ってインダストリアルなテイストの部屋に仕立てようと計画中です。
※パレット……すのこのような見た目の家具。もともとは運搬用の荷台。

息子さんの部屋をつくる際に確保できるスペースは180×250cm程度。3畳ほどの狭い空間です。幅を大きく取るベッドをどう配置するかが問題ですが、インテリア雑誌などのコーディネートを参考に、パレットのなかにベッドを収納することにしたそう。普段は布団を敷いたままにすることができ、来客時のみフタを閉めて隠すことができる、一石二鳥のアイディアです。

「男の子なので、秘密基地のようなワクワク感を大事にしたいと思っています。インテリアはシンプルでも、床が開いてベッドが出てくるとか、そういうギミックをふんだんにこしらえたいです」。

3人掛けソファのDIYやスピーカーベンチの改造(食卓の椅子へ)、ペンダント照明の改造なども考えているそうです。息子さんの成長や家族の暮らしの変化にあわせて「次は何をつくろうかな」と想いをはせる時間が何よりも楽しいといいます。

息子も、ものづくりを楽しむ仲間になってくれたらいいな

仕切りがないので、1人で過ごすときもどこか家族の気持ちがつながったままでいられるコモリ家。そんな環境だからこそ、息子さんには「軸足を家族に置きつつも、自由に自分のやりたいことをやれる人になってくれたらいいな」と思っているそうです。
また、これは息子さんが生まれる前から奥さんと話していたことだそうですが、「子どもではなく仲間として同じ感性をわかち合い、一緒に楽しいことを“悪だくみ”できる……そんな関係になれたら最高ですね」とコモリさんはいいます。

「これからも自分たちのつくったモノ・コトで楽しい日々を過ごせるような、“自分たちらしい暮らし”をしていきたい」と語るコモリさん。それがどう変わっていくかは息子さんの成長と、コモリ夫婦の価値観や気持ちの変化次第だといいます。そのため決まったビジョンはありません。
「気の向くままに自然体で過ごし、いくつになっても3人で『今日は何を楽しいことしよっか……いっひっひ』とたくらんで、ものづくりをする楽しさを持ち続けられるような、そういう家族でありたいと思っています」。

    UPDATE:
    クリエイターズライフ
    コピーライター/クリエイティブディレクター×イラストレーター コモリ夫妻

    コモリ夫妻 Komori Fusai

    プロフィール:
    コモリ夫妻(コモリフサイ)
    クリエイティブディレクターの夫とイラストレーターの妻から成るクリエイターユニット。夫は文章・デザイン・DIYを、妻は手芸・イラスト・料理を主に担当する。日々の衣食住の自給自足率を上げることを目標に、家具や衣服を制作中。

    コモリケイ(コモリさん)
    東京都出身、コピーライター/クリエイティブディレクター。10代の頃から独学で文章・イラスト・デザインを学ぶ。守備範囲はコピーライティングからシナリオ作成、フォトグラフ、アートディレクションまで幅広い。趣味は小説の執筆、家具のDIY、愛車のカスタム、カメラ、廃墟巡りなど。

    コモリケイコ(奥さん)
    鹿児島県出身、イラストレーター/手芸家。旧姓名は上山桂子。紙・Web問わず、キャラクターデザインからイラストレーション、グラフィックデザインまで手広くこなす。おむつなし育児アドバイザーとしての顔も持ち、おむつを極力使用しない古来の育児法の普及に努める。おむつなし育児の4コマ漫画ブログ「まいにちおしりケーション」も運営中。