イラストレーター・グラフィックデザイナー 齋藤州一

第5回 個展に向けての作品づくり

経緯と制作、その思い

Part.5of 6

「もっと自分を知ってほしい」「もっと作品を見てほしい」
クリエイターたちが抱くそんな思いを、自らの言葉で自由に発信してもらう場。
それが、連載企画“クリエイターズノート”です。

イラストレーター・グラフィックデザイナーである齋藤州一さんによるクリエイターズノート。
第5回では、齋藤さんの個展「ばけものづくし」の開催を記念し、展示作品の制作裏話を紹介してもらいました。東京・高円寺の「ca*n*ow FOREST」さんで開かれる同個展。期間は10月19日(木)~10月30日(月)です。お時間のある方はぜひ足を運んでみてくださいね。

個展の会場について

今回は前回お伝えしたように、個展の作品をご紹介したいと思います。

でもその前に、まず個展の会場となるca*n*ow FOREST(以下ca*n*ow)さんの説明をさせてください。
会場は東京の高円寺にあるca*n*owさん。様々なイラストレーターやアクセサリー作家、造形作家の作品を扱う雑貨店です。動物をモチーフにされている作家さんの作品が多くて、ポストカードや日常を彩る小さな食器など、とにかくかわいい雑貨がたくさんあります。

そのca*n*owさんがある高円寺は、もともと就職とともに東京に越してきて最初に住んだ町で、私自身思い入れがとても強い場所なんです。その高円寺で「何かしたい」と思っていた折にca*n*owさんに声を掛けていただいて、過去に一度展示をする機会がありました。それからというもの、ポストカードなどの作品をずっと置いてもらっています。

入り口の窓から覗いたca*n*owさんの店内風景

ただ、最近はなかなか新作を置くことができなくて申し訳ないなぁと思い続けていて……。仕事が続くと個人制作の時間がなかなか取れないんですよね。この不義理をどうにかしたいと思い、「だったら個展をやってしまえ」と(笑)。新しいモチーフに挑戦したいという思いもあったので、ca*n*owさんで個展をすることに決めました。

個展作品について

さて作品についてですが、今回はその個展のDMにも用いたメインとなる作品をご紹介したいと思います。

個展メインビジュアル

個展のタイトルは「ばけものづくし」。妖怪をモチーフとした展示です。好きな妖怪を自分のタッチでたくさん描いてみたいというところからスタートした、なんともフワッとした企画なのですが、モチーフが妖怪なのでやはりちょっと怖いものも多いんですよね。かわいい雑貨が多いca*n*owさんですし、あまりに不気味なビジュアルは良くないだろうなと。もともと描きたかったのは妖怪が群れをなして歩き回る百鬼夜行図のようなものだったのですが、それをもう少しポップで楽しい世界にしたいと思いました。

その発想のヒントになったエピソードを一つ。ちょっと話はそれるのですが、私は作家活動の一環で、個人や仲間内でアート本やイラスト本のイベントなどにちょくちょく出展しているんです。出展者たちが思い思いの本を作って販売する様子や、それらの本を求めて多くの人が集まる様子がシンプルかつ刺激的で、とても好きなんですよね。
その光景――お祭りのようにたくさんの人が好きなものを求めて練り歩く光景を見た時に、ふと百鬼夜行図と結びついたんです。「妖怪の世界にもこういうイベントがあったら楽しいだろうな」と、今回のイラストの元となるような絵が頭の中に浮かんできて、これでいってみようと思いました。

描くことが決まれば、あとはこつこつと手を動かすのみ。今回は百鬼夜行のイメージで妖怪たちがぞろぞろと歩いているように見せたかったので、横長のサイズでいこうとだけ決めて、ラフは描かずにとりあえず妖怪を一体一体描いていきました。仕事と違ってその時のインスピレーションで描いていけるのは、オリジナル作品制作の面白いところですね。

パーツに分けて描いていく

最終的に一つのアートボードにコラージュのようにレイアウトしていって、完成図のような形で落ち着きました。

完成イラスト(左)

完成イラスト(右)

ルーツを探る時間

今回はPC上で完成させたイラストを、A1サイズの和紙にプリントアウトしました。これが展示用作品となります。

この作品のアイデアを思いついたのが5月頃。その間、仕事でなかなか取りかかれなかったり、別の作品を描いていたりで完成したのが8月末でした。実は、この作品のまとめ作業に取りかかっていたのと同じ時に、このコラムの第4回原稿を書いていたんです。「自分の中のクリエイティブとは」というお題でいろんなことを思い返しながら作品も描いていたので、この期間は自分のルーツを探るような時間でしたね。

原稿とイラストを行ったり来たりしているうちに、思い立って急遽背景の色を変えたり、ちょっと小物を足したりもしました。このコラムの影響はかなり色濃く出ているような気がします。なので、なんだか「ありがとう」という気分です(笑)。

さて、個展ではこの他にもたくさん妖怪を描きました。グッズもいろいろと用意しますので、ご来場いただけたら嬉しいなと思います。

齋藤州一 個展「ばけものづくし」
会期:2017年10月19日(木)~10月30日(月)
   11:30〜19:00 CLOSE 火・水
場所:ca*n*ow FOREST
   東京都杉並区高円寺北2-3-15 オフィスアイ101
   http://ca-n-ow.com

全6回のコラムも次で最終回です。次回は個展のご報告や、これからのことについて書いていければと思っています。どうぞ最後までお付き合いください。

最終回につづく。

    UPDATE:
    クリエイターズノート
    イラストレーター・グラフィックデザイナー
    齋藤州一

    齋藤 州一 Shuichi Saito

    齋藤州一(さいとう・しゅういち)
    グラフィックデザイナー/イラストレーター。
    1980年生まれ。出版社のインハウスデザイナーを経て2013年フリーに。グラフィックデザイン・イラストレーションなど、グラフィック表現の分野で制作活動を行う。
    著書『動物と植物の素材集』(インプレス)。
    sososo graphics代表。