フォトグラファー 七咲友梨

第2回 現在の活動について【後編】

手の届く場所からつくること

Part.2of 6

「もっと自分を知ってほしい」「もっと作品を見てほしい」
クリエイターたちが抱くそんな思いを、自らの言葉で自由に発信してもらう場。
それが、連載企画“クリエイターズノート”です。

フォトグラファー・七咲友梨さんによるクリエイターズノート。
第2回は、七咲さんが思う「手の届く範囲で一生懸命モノづくりをすること」の大切さと、そうすることで実際にカタチになったお仕事や作品を紹介してくれました。

わたしたちはここにいます

昔にくらべて、写真や映像を撮ることや印刷することが安くなったと言われます。カメラをもって歩く人も、ZINEなどを制作して発表する人も数年前よりずいぶん増えました。こうした個人的なワークが世の中に増えていくこと、わたしとっても好きです。

「これ好き!」と言うこと、それは案外勇気のいることだと思います。「好きじゃない」と言うのは簡単なのに、「好き」と言うのは恥ずかしさを伴う。でもSNSを含めて自分を表現することが以前よりも日常化してきたいま、自己表現のハードルは下がりはじめたような気がしています。人と違っていて当たり前という考えも、これからもっともっと広がっていくような感覚があります。

MOUTAKUSANDA!!! magazineというインディペンデント・マガジンがあります。これまで写真や展示などで関わってきました。
「まずは自分たちが本当におもしろいと思える雑誌をつくりたい」とWebマガジンでスタートして、今は紙の雑誌として販売されています。

MOUTAKUSANDA!!! magazine(issue:0)
Model:岩永達也 Tatsuya Iwanaga(レプロエンタテインメント)
Stylist:梅田一秀 Kazuhide Umeda
Hair & Make:高徳洋史 Hiroshi Takatoku(Lyon)

モノを個人的につくっている人が増えて、そういった人たちがお互いにつながっていき、できることも広がっていく。これは『MOUTAKUSANDA!!! magazine』だけではなく、いろんなところで起きている現象だと思います。
大きなところから声がかかるのをただ待っているだけではなく、まず自分たちで動き出してつくれる時代になったのです。わたしたちはいま、本当におもしろい時代に生きています。
だからこそ、一番最初の「これ好き!」を大事にしたいな。

 

だんだんおとなになる

IWAMI driver’s map

30代になると、同級生たちがどんどんたくましくなっていくのがハッキリと見えてきます。それぞれが選んだ道のプロになっていくのを見ると「すごいすごい!」と、ワクワクします。

2014年にわたしの地元である島根県で、地元の同級生たちとドライバーのための観光マップをつくりました。
「観光マップ」といっても、いわゆる観光名所ばかりを取り上げるのではありません。地元の人に愛されているうどん屋さんや、伝統芸能の稽古場で金髪の男の子が石見神楽を舞う様子、近所の人しか知らない本当に水の綺麗な川などを、撮り下ろした写真を中心に紹介しました。

「1万人に1回来てもらうより100人に100回来てほしい」と、この企画を立ち上げたのはシマネプロモーションの三浦大紀くん。アートディレクターは益田工房の洪昌督くん、デザイナーは同じく益田工房の桑原宏幸くん。みんな島根出身の同い年です。

IWAMI driver’s map

地方で活躍するクリエイターは、いまはそれほど珍しくなくなってきましたが、3年前はまだ珍しかった気がします。
わたしはこの仕事を通じて地元のおもしろさを教えてもらいました。まだ発見されていないコアな文化が息づいています。

旅雑誌の『TRANSIT』で紹介してもらったり、この冊子が県外の方に本当に評判がよかったのは、関わったみんなが客観的に地元を見られる目をもっていたからかもしれません。そして、当時まだあまり例のなかったテーマの冊子をつくらせてくれた島根県の柔軟さにも、いいところだなぁと改めて思わせてもらいました。

IWAMI driver’s map

 

ボーダーライン?

だんだんあったかくなってきたので窓を開けて過ごす日が増えてきました。風に揺れるカーテンなどにうっとりしている時、映像を撮りたくなります。
次は、これまでに撮った映像をいくつかご紹介しようと思います。ファッションブランドや商業施設、ミュージシャンの楽曲イメージを表現したもので、どれもお仕事として依頼をいただいて製作しました。

■DK made (2013AW CM)

Cast:Jai West / Shizuka
Music:Kuniyuki Takahashi
Cinematography:Takeya Sekiguchi / Daisuke Yamashita / Yuri Nanasaki
Hair & Make:Masashi Tateno(pep)
Editing Takeya:Sekiguchi
Online Editing:Kazuya Hayashi
Special Thanks:Maki Fujiwara
Directed by Yuri Nanasaki

DK madeのCMはわたしが脚本を書き、ドラマ仕立てで製作しました。出演してくれた Jai Westさんは役者時代からの友達で、『MOUTAKUSANDA!!! magazine issue:0』の表紙にも出ています。昔からJaiの演技の大ファンなので、わたしの書いた脚本を演じてくれるなんて、もうほんとに夢みたいでした。歌手の静さんはJaiからの紹介なのですが、ミステリアスな雰囲気がぴったりで、すぐに出演をお願いしました。この2人のおかげでなぜか初々しくて、艶っぽい作品になりました。

ヘアメイクの立野正さんとは、写真家のテラウチマサトさんの撮影の時に出会いました。その時わたしはモデルでした。立野さんのヘアメイクは魔法みたいで、崩れていくほどに美しさが増していくようなところがあります。人をのびのびさせる魔法つかい。
立野さんにご紹介いただいた方々にも協力していただき、この作品は完成しました。

■GREAT3 (ポカホンタス MV)

Directed and edited by Jan & Yuri Nanasaki
Wonderful dance by Kotone Osada
Cinematography by Nanaco Sato and Manabu Numata and Yuri Nanasaki
Hair Make-up by Masashi Tateno(pep)
Special thanks Taro Watanabe, Masaya Yamawaka, Takuto, Katsuhisa.H, Neuro Cafe Tokyo

GRAT3のメンバーのJanくんと一緒につくりました。
Janくんとは、Webマガジンの仕事でJanくんのもうひとつのバンドJan & naomiの撮影をしたり、Janくんのお母さんでアーティストの佐藤奈々子さんには、まるでお姉ちゃんのようにお世話になっています。
Janくんと一緒につくったことで、わたしにはない感覚の入った仕上がりになりました。
一緒に撮影してくれた写真家の沼田学さんは、写真のことを相談できたり一緒に展示したりと、一緒に遊んでくれるアニキみたいな存在です。

■アスナル金山 (2016年CM)

Art director:Keisuke Harada(KMSD)
Movie director:Hiroaki Fujimoto(bubbletown project)
Cinematographer:Yuri Nanasaki
Hair & Make:Masashi Tateno(pep)
Styling:Yuka Yamazaki
Model:hito

名古屋の商業施設、アスナル金山のイメージビジュアルを1年間撮りました。
テーマは「ちょっとオトナ」。
ディレクターの藤本浩明さんとは役者の方のリールを一緒につくったこともあり、ご一緒するのは2度目でした。藤本さんの想像力を掻き立てる演出が大好きです。

こうして書きながら、全ての作品で立野さんにお世話になっていること、そして製作チームの多くが友人のクリエイターやアーティストたちで構成されていることに気がつきました。以前から個人作品を一緒に製作してきた友人たちと、お仕事として作品を製作しているような感じです。

彼らは、それぞれ個人の手が届く範囲からモノをつくり始めた人たち。彼らとの関係は私にとって特別で不思議なものです。
パーソナリティーが好き、波長が合うということも、もちろんあるのですが、頻繁に会うわけじゃなくても長く付き合い続けているのは、きっとお互いにクリエーションを続けていて、お互いがつくるものを尊敬しているからだと思います。

作品が好きな人と、仕事とは関係なく一緒にコラボレーションする。それが、気がつけばクライアントワークになる。クライアントワークでの発見がまたプライベートワークに影響する。
「仕事か作品か」ということはよく話題に上りますが、ボーダーって思ったよりあやふやになってきているかもしれません。

Art director:Keisuke Harada(KMSD)
Hair & Make:左,右上 Masashi Tateno(pep)/ 右下 Asumi Washizuka
Styling:Yuka Yamazaki
Model:hito

第3回につづく。

    UPDATE:
    クリエイターズノート
    フォトグラファー
    七咲友梨

    七咲 友梨 Yuri Nanasaki

    七咲友梨(ななさき・ゆり)
    フォトグラファー。島根県出身、東京在住。
    リアリズム演技を学び、役者として映画、ドラマ、舞台、CMなどで活動。その後、写真家・横木安良夫氏に師事し、独立。演劇経験で培った手法を活かし被写体に向き合う。ポートレイトを中心に雑誌、広告、書籍などの分野で活動。CM、ミュージックビデオなど映像カメラマンも手がける。また写真集、写真展など作品発表も行う。
    2012年に写真集『No where, but here』(ShINC.BOOKS/Bis.)を刊行。