JAA広告賞

広告賞にも様々な形態があります。
ここでは、世界でも類を見ない大きな特徴を持つ総合広告賞をご紹介します。
「JAA広告賞」。
応募するのは広告の発信者。
発信者とは、アドバタイザー、媒体社、広告会社、広告制作会社です。
これが応募者条件です。
ここまでは、個人の応募が限定されているだけで、他の広告賞にも同様な応募形態はあるので、さほど珍しいことではありません。
ただ、大きく違うのが、審査をするのが、受け手である消費者であるということです。
ここの賞は、「生活者視点」から優れた作品を表彰することで、消費者とのコミュニケーションの在り方を模索し、健全な広告の在り方と、発展に寄与することを目的にしています。
生活者【を】満足させる情報提供としての広告ではなく、
生活者【が】満足する情報提供としての広告
【を】は、発信者の都合です。
【が】が、消費者が求めている情報提供としての広告です。
そんな、「広告顧客満足度」視点に立った広告賞が、「JAA広告賞」なのです。
2016年は1938件の応募がありました。
では、消費者が選ぶ広告賞「JAA広告賞」と、その主要受賞作についてご紹介いたします。
概要
「JAA広告賞」は、主催の日本アドバタイザー協会(創立時は「日本広告主協会」)の創立4年後の1961年に創設されました。
タイトルが「第1回消費者のためになった広告コンクール」。
まさしく、高度成長期の1960年代らしいネーミングの広告賞でした。
以来、半世紀を重ねた2015年、今までの賞主旨・審査方法が刷新されました。
デジタル技術の発展や、広告を取り巻く様々な環境変化が、同時に受け手としての消費者意識も変革させたとの理由からです。
そこで、「消費者のためになった」から「消費者が選んだ」にすることで、消費者が選ぶという原点を強調した広告賞へ刷新させました。
主催
公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会
後援
経済産業省
特徴
最大の特徴は審査の主役が「消費者」
審査は、消費者選考〜選考委員選考〜消費者最終選考の順で実施されます。
部門
募集は以下の6部門です。
- 新聞広告
- 雑誌広告
- テレビ広告
- ラジオ広告
- Web広告
- 屋外・交通広告
表彰
- JAA賞(グランプリ)/各部門のファイナリストから各1点
- メダリスト(トップ10)/各部門からそれぞれ10点
- ベストパートナー賞/JAA賞受賞作品に携わった企業または個人
- 経済産業大臣賞/全ファイナリストから 1 点
審査・選考
審査・選考は以下の三段階で行なわれます。
- 100名の消費者審査員(10代以上の各世代男女)による審査会。
- 有識者によるメダリスト(トップ10)および経済産業大臣賞選考会
- 20名の消費者最終選考委員によるJAA賞(グランプリ)選考会
ここで1次選考会を行います。2016年度は、1938の応募がここで136に絞られました。
ここでTOP10を決定しますが、贈賞は9〜11など、10作品に限りません
選考基準
- 好感、共感、親近感がもてる広告であるか。(感性)
- わかりやすく、納得できる広告であるか。(理性)
- オリジナリティが感じられる広告であるか。(創造性)
審査委員
審査委員長
- 芳賀 康浩(青山学院大学 経営学部 教授)
審査委員
- 奥田 和美 (料理研究家 ブロガー たっきーママ)
- 川﨑 和則 (一般社団法人 日本メンズファッション協会 広報部部長)
- 釘宮 悦子 (公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 理事広報委員長)
- 黒岩 達哉 (公益社団法人 日本広告審査機構 審査部長)
- 齋藤 啓子 (武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科 教授)
- 中本 純子 (一般社団法人 全国消費者団体連絡会 制作スタッフ)
- 平井 淳生 (経済産業省 商務情報政策局 文化情報関連産業課長)
- 学生代表 男女各1名 (東京学生広告研究団体連盟 学生)
第54回JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール
JAA賞 新聞
味の素株式会社「和食は、引き算。洋食は、足し算。」
日本料理は出汁の旨味をベースに素材の本来の味を引き立てる料理法であるのに対して、西洋料理はさまざまな食材やスパイスをつけ足していくのがおもな料理法です。このクリエイティブでは、その特徴の違いを和食は水墨画に、洋食は絵画になぞらえて表現されています。
和食の水墨画は近世水墨画の最高傑作として国宝にも認定されている長谷川等伯筆(はせがわとうはくひつ)の松林図屏風です。遠くは淡く、近くなるにつれて濃く、力強く、松の生命力を感じさせるこの松林屏風は、禅やわびの境地を表しています。
いっぽう、洋食の絵画はジャン=バティスト・カミーユ・コローの「朝、ニンフの踊り」です。カミーユ・コローは19世紀フランスの自然主義バルビゾン派で、全体的に銀白色を帯びた叙事的な表現が他の画家にも支持された有名な風景画家です。この絵画では、神話の世界のニンフが夜明け前の薄暗い朝もやの森の中で楽しそうに踊っている様子が描かれています。
原画はともに配色は少なく、陰影の濃淡が美しい作品ですが、この広告クリエイティブでは、洋食は「足す」様々な色彩が加えられ鮮やかな絵画に、和食の水墨画も全体を黄味がかった色彩に調整され、どちらも見る人の目を引く明るくポップな作品に仕上げられました。
JAA賞 雑誌 三菱電機株式会社「世界昇降紀行」
この広告は世界中の建築物に設置された三菱電機のエスカレーター・エレベーターがどのように活躍しているのかを紹介したシリーズ広告です。このJAAの受賞作品はvol.1~10までが対象作品とされています。
vol.1ではラスベガスのホテル「ザ・フォーラムショップス」の世界でも珍しい螺旋エレベーターからはじまり、vol.4ではガラパゴス諸島の「ホテル アルバトロス」、vol.7では世界最南端の都市ウシュアイアにて海抜250mの高台にそびえるスパリゾートホテル「アラクル」など、世界各地で三菱電機エレベーター・エスカレーターの技術力、メンテナンス性、サポート体制の品質の高さを紹介しています。
この作品は事務的にいえば「エスカレーター・エレベーターの導入事例」です。しかし視点を変え、「世界昇降紀行」という旅行になぞらえたテーマにすることで、各地の美しい自然風景や建築物の写真にまるで読者が海外旅行に来たかのような感動と、日本から遠く離れた土地でも三菱電機のエレベーターが採用されているのだという驚きを与えてくれる作品となりました。
JAA賞 テレビ 東京ガス株式会社「家族の絆 母とは」
東京ガスのテレビCM「家族の絆」のシリーズ広告の中から「母とは」がJAAテレビ部門にて受賞しました。キャスティングは母親役に渡辺えりさん、息子役に岡山天音さんが起用されています。
この作品は「母とは、ノックをしない。電話のとき声がかわる。メールが変。人の服を勝手に着る。涙もろい。勘が鋭い。というか、テレパシーが使える・・・。」といった、誰もが思い当たる母親とのエピソードが含まれた1分半のショートストーリーのCMです。
最初はコミカルですが、社会人となりネクタイを直してくれる母を「いつのまにか歳をとっている」と感じるシーンは、子どもにとって母を想う懐郷的な気持ちにさせられます。
それが多くの人の共感と感動を生み、放送された2015年は感動するCMとしてネットで話題となるなど、大きな反響を生む結果となりました。
JAA賞 ラジオ パイオニア株式会社「いろんな道(楽ナビ)」
ラジオ広告ではパイオニア「いろんな道(楽ナビ)」が受賞しました。ある男性が道路交通情報サービスに電話するところから始まります。
「あのぅ、出世街道に乗りたいんですけど・・・。」「現在地はどちらですか?」「サラリーマンのマニュアル通りを12年ほど走ったところです。」
このような人生の道を見失ったときでも、道路交通情報サービスは順路と注意点を次々と回答していきます。コント仕立てながらも、サラリーマンなら誰もが共感してしまうであろう的確なナビゲーションの回答にクスッと笑える展開となっています。
もちろんこの相談は演出ですが「どんな道でもナビゲートします」という高性能なナビゲーションであることが暗喩されています。
ラジオ広告の難しさは、リスナーが「ながら聞き」をしているところにあります。別のことに集中しているリスナーから音源のみで注意を引いて商品の印象残さねばなりません。そのため、声優さんの高い演技力や演出の無駄を排除した脚本と構成が求められます。
それを強い共感性でリスナーの注意を引きつけられる脚本に仕上げられたこのCMは、受賞にふさわしいラジオ広告だといえるでしょう。
JAA特別賞 屋外・交通
アサヒビール株式会社「東京でいち早く、桜が満開! ~上野に桜の“新名所”誕生~」
関東ではまだ桜が咲き始める前の2015年3月上旬に行われたOOH広告です。メトロ上野駅の改札口あたりで、天井と壁にはピンクに彩られた桜の花、そして床には花びらが敷き詰められたディスプレイが施されました。
ディスプレイの桜は三分咲き、五分咲きと時間を追って満開にさせる演出も行われ、この様子が東京キー局の朝のニュースでも話題にとりあげられました。すると、普段は通学や通勤で足早に通る人々のほかにも、写真撮影をしてSNS投稿する人など多くの人が集まり、ラッピング広告としてはかつてない規模のプロモーションとなりました。