ADC賞

広告賞は星の数ほどあります。今回はその中からADC賞について、そのあらましや応募要項についてご紹介します。
概要
ADC賞は1952年9月5日に、アートディレクターの専門的職能の社会的確立、推進を目的として創立されました。表彰作品は毎年7月に展覧会に出品されています。また、年鑑が11月に、授賞式が12月に行われます。2003年には50周年記念として、宣伝会議「ADC大学」が行われました。
対象者・応募資格
前年5月1日から該当年4月30日までに日本国内で発表、使用、掲載されたポスター、新聞広告、雑誌広告、ブック&エディトリアル、ジェネラルグラフィック、パッケージ環境空間CI、マーク&ロゴタイプ、コマーシャルフィルムが対象です。
部門一覧
ポスターA 商業広告部門
商品広告や企業広告が対象です。
ポスターB その他部門
公共、演劇、展覧会などの作品が対象です。
新聞広告部門
新聞広告が対象です。
雑誌広告部門
雑誌広告が対象です。
ブック&エディトリアル部門
雑誌や単行本、画集、写真集、展覧会カタログなどが対象です。
ジェネラルグラフィック部門
DMやカレンダー、ノベルティグッズ、PR誌、CD、DVDなどが対象です。
パッケージ部門
パッケージの現物が対象です。
環境空間部門
サイン、ディスプレイ、舞台美術、イベントや展覧会場などが対象となります。
CI、マーク&ロゴタイプ部門
マークやロゴタイプ、名刺、レターヘッドなどが対象になります。
コマーシャルフィルム部門
オンエアされたコマーシャルが対象となります。
各賞の内容
ADCグランプリ
【選出数】1点
【副賞】トロフィーと賞金50万円
ADC賞
【選出数】10点
【副賞】トロフィーと賞金10万円
ADC会員賞
【選出数】3点
【副賞】トロフィーと賞金10万円
ADC制作者賞
※ADC制作者賞は会員証に含まれる非会員の制作スタッフで、特に認められた人に贈られる賞です。この賞は人数やジャンルの限定がありません。
直近の応募要項
応募規格
期間
前年5月から該当年4月30日までに日本国内で発表・使用・掲載された作品のみに限られます。ただし、ポスターB、ブック&エディトリアル、ジェネラルグラフィック、パッケージ、環境空間、CI,マーク&ロゴタイプ部門の作品は日本在住のアートディレクターが制作した場合は、海外で発表された作品も応募可能です。未発表のものやプレゼンテーションのための作品は応募できません。
応募カードについて
応募作品には1点ごとに所定の応募カードを貼る必要があります。カードには「グラフィック用」と「コマーシャルフィルム用(TV用)」があり、複数必要な場合はA4用紙に原寸大コピーで使用します。
応募方法
2017年の応募期間は、グラフィックで送付の場合4月3日から4月17日まで、持ち込みの場合は5月15日となっています。コマーシャルフィルムの場合、2017年の応募期間は持ち込みの場合で4月10日、送付の場合で4月3日から4月7日までとなっています。
出品手数料
ポスターA 商業広告部門
商品広告や企業広告のポスターはB1サイズまでは一枚5,000円、B倍の場合8,000円、B倍より大きいものはB倍の大きさを基準に算出します。立体や添付物のあるものなど特殊なポスターは一枚10,000円です。
ポスターB その他部門
ポスターBはポスターAと同じ出品手数料がかかります。
新聞広告部門
1ページの広告の場合は1点につき2,000円、見開きは2点分の手数料がかかります。全五段や半五段など、小サイズのシリーズ広告の場合はB2サイズまでの台紙にまとめて1枚3,000円です。
雑誌広告部門
雑誌広告は1点につき2,000円、1シリーズ3点までは4,000円で、それ以上は1,000円が1点につき加算されます。 1ページ未満の小サイズ広告の場合、B2サイズの台紙にまとめて1枚3,000円です。
ブック&エディトリアル部門
文庫、新書、A5版よりも小さいサイズは1点につき2,000円です。それ以上のサイズは1点につき3,000円となります。大型本では1点につき3,000円、本文の提出は台紙にまとめて貼り付け、B3サイズで4,000円、B2サイズで8,000円がそれぞれ1点につきかかる手数料です。雑誌の表紙の場合も本文と同じように台紙に張り付け、同じだけの手数料がかかります。
ジェネラルグラフィック部門
ページものは本体1点3,000円、展開例を提出する場合はB3サイズの台紙で4,000円、B2サイズの台紙で8,000円がかかります。 カレンダー、チラシ、DMなども同じ値段です。
環境空間部門
B3サイズは1点につき4,000円、B2サイズは1点につき8,000円です。
CI、マーク&ロゴタイプ部門
B4サイズで2,000円、B3サイズで4,000円、B2サイズで8,000円になります。
コマーシャルフィルム部門
60秒までが1点12,000円、61~90秒が30,000円、91~120秒が40,000円、121~150秒が50,000円、121~150秒が50,000円、151秒~180秒が60,000円となっています。 詳細は「ADC Tokyo Directors Club」のサイトをご覧ください。
2016年度ADC賞受賞作品
ここからは、2016年度の受賞作品の中からピックアップして紹介していきます。
ADCグランプリ
大塚製薬・カロリーメイト「見せてやれ、底力。」
1987年に発売された岡村孝子の「夢をあきらめないで」のカバーバージョンが流れる中、 黒板アートという手法を使い、受験までの出来事を振り返り、受験に臨むところまでを描いた作品です。現役の美大生34人が制作した6328枚の黒板アートをアニメーションの形で展開していくことで、印象的な回想シーンを演出しています。 実際の受験を経た世代を中心に、「泣けるCM」として話題になった作品でもあります。
ADC賞
Apple Inc.「iPhone World Gallery」
実際にiPhone6を使用して撮影された写真を全面広告の形で掲載することで、写真の題材はもちろんのこと、「この写真がスマートフォンで撮影されているのか…」と、そのクオリティが見る者へ多大なインパクトを与えた作品と言えるでしょう。
ADC賞
NTTドコモ「Style ’20」
2020年に開催が予定されている、東京オリンピックおよびパラリンピックへの出場が予想される注目選手たちのインタビューと、練習風景を中心とした映像作品です。 オリンピックやパラリンピックに臨む選手たちの熱い想いや真摯な姿勢が、見る人の心にまっすぐ届くと同時に、2020年のオリンピック・パラリンピックへの期待へとつながるように感じられます。
ADC賞
サントリー「愛鳥活動 Line of life Project」
日本で一度絶滅したコウノトリを、もう一度見られるような環境を取り戻したいという願いを込めて、千葉県野田市の「こうのとりの里」にて、コウノトリを模した凧を制作し、地元の子供達とともに空高くあげる催しを中心に作られた作品です。 環境保護という大きな問題に対して、手をこまねいて見ているだけでなく、できることをほんの一歩ずつでも進めていくことが、大きな成果につながるための希望の礎となることが伝わってきます。
ADC賞
三菱地所アルティアム「吉田ユニ展 IMAGINATOMY」の環境空間
木村カエラやCharaのCDジャケット・デザインや、野田秀樹の演出する舞台「THE BEE」「半神」のビジュアルを担当した吉田ユニの作品を展示したイベントです。 独自の視点を持ち、見る者の想像を超えた作品の世界観の源泉を垣間見せることで、より一層彼女のデザインの魅力を世間に浸透させることに成功しています。
ADC賞
松山市立子規記念博物館「松山市立子規記念博物館」のポスター
白の背景に墨で描かれたような太めの線で表現したこの作品は、シンプルでありながら、印象的な横顔のフォルムによって、日本の近代文学の代表的な文学者のひとりである「正岡子規」とわかるように表現され、尚且つ深い味わいを感じさせてくれるものとなっています。
ADC賞
新潟市「水と土の芸術祭2015」のポスター
まるで白い壁に土を投げつけたように写るこの作品は、土の下に見える水を表現したように思われる配色と重なることで、見る人の心に突き刺さるように印象づけてくれます。 この「水と土の芸術祭2015」は、2015年7月18日から10月12日までの87日間に渡って開催され、日本を代表する選りすぐりのアーティストたちの作品が来場者の琴線を刺激し、感動を与え、大いに楽しませてくれました。
ADC会員賞
虎玄「TORAYA CAFE・AN STAND」の環境空間、マーク&ロゴタイプ
新宿駅南口にある新たなカフェの壁面を使ったデザイン作品です。白地のタイルの背景にモノトーンで描かれたユーモラスでユニークな2頭の虎が仲睦まじく並んでいます。 この虎たちをボンヤリと眺めながら、ゆったりとした時間を過ごすことで、日々のストレスや悩みから一瞬でも逃避し、良い意味での気分転換となっている人もいるように思われます。
ADC会員賞
イッセイ・ミヤケ「PLEATS PLEASE ANIMALS」のポスター、グラフィックデザイン
三宅一生のブランドを動物化させることで、新たなブランドイメージを構築しています。後ろ姿の動物は、まるで何かを考えているような、物思いにふけっているような、そんな印象を与えてくれます。案外、「晩御飯は何にしようかな」ということを考えているだけなのかもしれませんが、そんな非日常的なことを感じさせてくれる作品となっています。
原弘賞
YMP「薔薇刑」のブック&エディトリアル
三島由紀夫を被写体にした写真集「薔薇刑」の復刻版で、アートディレクター浅葉克己さんが装幀を務めた作品です。白をバックに黒で描かれた、バラのトゲのようにギザギザと尖った「薔薇刑」の文字と、オリジナリティ溢れる英文のタイプが合わさることで不思議な化学反応を起こしています。