MISIAの里山ミュージアム

自然を感じて楽しむアート&音楽「MISIAの里山ミュージアム」【後編】

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ソーシャルグッドなイベントをご紹介するイベントレポート。
今回は2017年6月11日に石川県河北郡津幡町にある「石川県森林公園」にて開催された「MISIAの里山」ミュージアムについてご紹介します。
後編では、GOOD! CREATORでもコラムを執筆してくださっているフォトグラファーの七咲友梨さんのワークショップの模様をレポートします。 GOOD! CREATOR編集部のディレクターも参加させてもらいました。

MISIAの森で思い思いに写真に切り取る

講師はフォトグラファーの七咲友梨さん

島根県出身で、島根と東京を拠点に活動する七咲友梨さんリアリズム演技を学び、役者としての活動を経て独立。演技経験で培った手法を生かして被写体に向き合っています。ポートレイトを中心に雑誌や広告の写真も手がけ、映像制作にも取り組むなど、幅広く活躍中です。GOOD! CREATORにもコラムを執筆しています。

今回のワークショップにはGOOD! CREATORの編集部のディレクターも参加しました。
GOOD! CREATOR編集部で記事のディレクションを担当する金子洋介さん。IT系のベンチャー企業で制作物の企画・ディレクションを担当しています。両親の影響もあり幼少期から写真を始め、写真・映像系の大学に進学しました。自身の一眼レフカメラを片手に今回のワークショップに参加します。

まずは撮影の基本から

ワークショップは13時から16時までの3時間。参加者はカメラを持参し、MISIAの森で撮影に挑みます。初心者から上級者まで、幅広い層の方が参加しました。
撮影会に入る前に、七咲さんから撮影の基本となるカメラの設定と構図についてのレクチャーがありました。そのお話のなかから、いくつかのポイントを紹介します。

①カメラの設定を変えるだけでも表現は変わる

七咲さんは初心者にもわかりやすいように、資料も使いながら基本から解説していきます。
「まずはISO100で、次にISO800撮ってみましょう。」
参加者が実際に撮影しながら、撮影した写真にどのような差がでるのかをレクチャーしていきます。
「ISO800で外を撮ると、画像が真っ白に飛んじゃうんです。なので、ピーカンの時はISO100~200くらいで撮りましょう」

絞りとシャッタースピードについても、丁寧な解説が入ります。
「オススメなのはAモードで撮影ですね。これは背景のボケ具合を決められます。Mモードでは絞りとシャッタースピードを同時に変えられます。設定が難しく思われるかもしれませんが、実は単純なんですよ」

人物を撮る時の光の見方

設定を確認したら、次に意識したいのは光の位置。屋外で撮影する時に、太陽の光でどのように印象が変わるかを七咲さんが見せてくれました。
「太陽の位置は今、ここですね。人やモノに光があたると、その反対側には影が出ますよね。被写体の正面から光があたっているのが順光。被写体の後ろから光があたっているのが逆光です」。

初心者の方は被写体に目が行きがちで、光源によって写真の印象がどう変わるのかはあまり気づかないところ。ふわっとしたやわらかい雰囲気や、髪の毛などが陽に透けた状態を撮りたいなら「逆光」、色をはっきりと出したいなら「順光」。七咲さんの周りを移動しながら、光源を意識するだけで被写体の印象がどう変わるのかを見ていきます。
「ポートレイトを撮る時の方法の一つとして、日向ギリギリの日陰に立つという方法があります。そうすると影が顔に落ちることなく、明るさを取り入れられます」。

③ヨリとヒキの写真を使い分ける

光のポイントを意識したうえで、七咲さんは参加者の「子どもの自然な表情を撮りたい」という思いを汲んで、ヨリとヒキを解説してくれました。
「ヨリとヒキ両方で撮ってはいかがでしょう。ヒキで距離を取ると、この子がここで遊んでいる『状況』が見えてきます。逆にヨリで手など一部分だけを撮ると、ちっちゃな手のディテールや、その時に集中しているモノが写ります」。

ヨリとヒキを使い分けることで、見返した際にその時の雰囲気を伝えることができます。こうすることでアルバムの中でも近づいたり遠ざかったりという動きが生まれて、メリハリのあるものになります。
「ヒキだと今日の天気や空気感も一緒に写ります。逆にヨリで、その瞬間の表情をメインに写真に撮る。あとからアルバムを見ると、どんな日だったかをもう一度体験できると思います」
親子連れが多いなかで、お子さんの撮り方をレクチャーする七咲さんのお話は、参加者の心をしっかり掴んでいたようです。

撮影スタート

設定や光、ヨリとヒキというポイントを頭に入れ、いよいよ実践に移ります。参加者のみなさんはMISIAの森を散策しながら思い思いに写真を撮っていきます。七咲さんは撮影初心者の方に寄りそい、時折声をかけながら参加者を見守っています。

ここからは実際の撮影の様子をご紹介します。

お子さんを囲んで撮影会が始まります。

撮影中にも七咲さんはアドバイス。構図や人物の撮り方についても丁寧に教えてくれます。

講評会

自然を撮ったり、お子さんを撮ったりと、自由に楽しく撮影を続けていると、3時間もあったはずのワークショップもあっという間に終盤が近づいていました。最後に、撮影した写真から「これだ!」と思う2枚を選びます。なかには20分以上悩んでしまう参加者も。

七咲さんは「今の気分はこれ、で選んじゃってください。1番大事なのは決めることです。失敗はないんです」と声をかけていました。参加者がそれぞれ選んだ2枚の写真が出揃うと、撮影した方も気づいていなかったような良さを、七咲さんが講評をしていきます。

ここからは、参加者の方の作品と七咲さんの講評を一部ご紹介します。
まずは写真が長年の趣味という女性の方の作品です。

「アイビーの葉っぱはしっとりとした雰囲気が出ていますね。ガーランドの方は葉っぱの写真とは違って明るい印象。おもしろいですね。こうして選んだものを並べてみると、どこか共通するところがあるというか、このアイビーの写真とガーランドの柄に似ているものを感じます。この2枚を選んだことに、この方らしさが出ていると思います。写真を長年やってても、好きなものが撮れるってすごくいいことだと思います。だんだんシビアになってきて、シャッターを切る数が減っていく方も多いんですけど、純粋に好きなものを撮り、選べるというのは真っすぐな人柄が出ていますね」。

続いて、ご家族で参加された方が撮影されたお写真。

「奥様の足元で遊ぶお子さんを旦那様が撮った写真と、お子さんがおもちゃに夢中な姿を奥様が撮られた写真を選んでくれました。この2枚を見ると、ご夫婦で選ぶ写真が似てますね。お子さんがポーズをとった写真を選んでもいいのに、2人とも何かに夢中になっている写真を選んだところに、ご夫婦の『この子の好きなところはここ!』という気持ちが伝わってきました。子育ての方向性というか、のびのびさせてあげたいという思いを垣間見たような気がしました」。

撮影者が意図を説明して、その作品一つひとつに対して丁寧に講評していく七咲さん。「そんな見方もあったのか」と自分の作品の見え方が変わる人、他の方の写真を見ることで「視点が人それぞれでおもしろい」感心する参加者もいて、写真を撮り、みんなの前で発表することで皆さんの写真への興味が広がっているようでした。

ワークショップを終えて

参加者のコメントを紹介します。

1.クラモトさん

――今日のイベントは何で知りましたか?
チラシが職場にあって、そのチラシを見て、子どもと一緒に参加しました。自分もカメラを買ったばかりで、教えてもらいたいなと思いワークショップに参加しました。

――お子さんと一緒に回ってみて、どんな発見がありましたか?
子どもをにもカメラ持たせて一緒に参加したんです。二人して一生懸命写真を撮っている様子を七咲さんが褒めてくれましたね。
七咲さんの講評を聞いて、確かに子どもが撮るものって、大人がねらっていい写真を撮ろうというのとはまたちょっと違うなと思いました。我が子の写真を見て勉強になるところもありました。参加してよかったと思います。

――イベントに参加してのご感想は?
近くに住んでいて、森林公園はすごく身近な存在です。ここに来るとすごく癒されるので大好きなんですよ。子どものために動物を見せたいとか森林を見せたいと考えていましたが、最近は自分が癒やされている方が大きいかもしれません。このイベントを通して、改めて森林公園の魅力と、自然が大事だということに気づけました。

ワークショップ終了後、七咲さんに娘さんとの写真を撮っていただいてました。良い記念になったのではないでしょうか。


2.金子さん(GOOD!CREATOR編集部 ディレクター )

――今回は編集部の代表としての参加でしたが、いかがでしたか?
みなさんの前で自分の意図を説明して、感想を直接もらうことで視野が広がる有意義な時間でした。
真似したくなるテクニックや構図も見つかり、改めて写真の奥深さを実感しました。同時に、いざ自由に撮ってといわれると変に考え込んでしまったので、いかに自分の発想が凝り固まっていたのか、痛感しました。

――ワークショップで印象に残った点などはありますか?
一番驚いたのは、お子さんが写真を撮っているとき、手に持った枝をレンズに近づけていたんです。写真経験者だと「接写の時はマクロレンズで」とか「こういう構図で」とかを考えてしまうものですが、子どもはシンプルに「撮りたいものを撮る」。知識を持っているとこういう純粋な発想から遠くなるのかな、とも思いました。だからこそ初心を忘れず、新鮮な気持ちで写真を撮り続けることが重要なんだと感じました。

――最後にワークショップに参加した感想をお願いします。
「そういえば、ここに似た場所があそこにあったな」「こんな景色うちの地元にないな……」と、気づいたら自分の地元に当てはめていました。豊かな緑に囲まれて、気負わずに自然の大切さを考えられる、いい機会になりました。

まとめ・才能があるとしたら、それは続けること

最後に、講師を務められた七咲さんにも、お話を伺いました。

――ワークショップのねらいを教えていただけますか?
決められた3時間の中で、同じ時間・同じ天気・同じ場所でみんなが好きに撮った写真を見比べて、それぞれの視点があるということを伝えられたらいいな、ということが一番のねらいです。今日撮ったものを見比べるっていうことに関しては、初心者も経験者も平等です。初心者も経験者も関係なく「好きなものを撮るって純粋に楽しいし、その人のなにかしらを知ることができる」ということを知ってほしかったんです。

――印象に残った参加者の声はありましたか?
写真歴の長い方も何人かいらっしゃいましたが、普段はほかの方と写真を見せ合ったりする機会が少ないので、違う視点に気づけておもしろかったとおっしゃっていました。
写真でもなんでも、ある程度長くやっていると何が良いのか分からなくなってくることってあると思います。自分のクリエイションにどっぷり入っていくとか、もしくは全然ちがう分野の作品に触れるとか、「停滞感」から抜けるきっかけになることは、その時々で違うとは思うんですけど、誰かの写真をじっくり見るというのも1つの手だと思います。
わたし、写真に関して才能って信じてないんですね。シャッターを押せば誰でも「何か」は写せます。もちろん「なにかを感じる写真」とそうじゃない写真もありますが、続けていけばだんだん撮れるようになると思っています。才能というものがあるとしたら、続けることだと思います。それは言い換えると「好き!」ということそのものだと思っています。

――お子さんが撮られた写真を見ていて、大人のように物事を知らないからこその視点や撮り方があるように感じました。七咲さんはどのように感じましたか?

そうですね。例えばこの花の写真。本人は考えていないと思うんですが、ストロボがついていて不思議な光で写っています。これを撮影した小さな女の子は今日たくさん写真を撮った中で、この写真を選びました。わたしの目線では、力強くて少しグロテスクさをはらんだ写真だと感じますが、彼女が選んだ理由は「かわいい」でした。撮った時の印象を覚えているのでしょうか。その感じ方の違いもおもしろかったですね。
彼女のほかの写真を見せてもらっても、どれも本当に素直で興味深かったです。撮れているかどうかなんて全然気にしてないんですよね。撮っている途中で気になるものが出てきたら、迷わず次の興味の方に行く。それが写真にも表われていましたね。

子どもは「こういうのを撮ろう」って息巻いていないので、ミラクルがバンバン起こるんですよね。石を撮っていたんだけど手の影が隅っこにちょっとだけ入ってるとか、狙って撮れる写真ではない面白さがあると思います。

――写真の切り取り方というか、構図の捉え方とかが違うんですかね。
どうなんでしょう。わたしもああいう風に撮ってみたいんだけど、その方法がわからない(笑)。

――プロのフォトグラファーとして活かせそうな視点はありましたか。
子どもが興味に対する衝動で写真を撮る姿と、撮った写真を見て、初心に帰ることができました。わたしもカメラをはじめたばかりの頃は子どもと同じように好きなものをカメラという「宝箱」に入れていくような感覚でただただ撮っていました。その次は正確に撮れるようになりたいと思って、いいなと思う写真を真似しながらスキルやメソッドを修得していきました。

依頼された写真を撮るようになってからは特に「四隅まできちっと整っていなくちゃいけない」という気持ちも強くなりました。でも今度は、「正しくて、整っている」ほど、おもしろくなくなってしまう。行ったり来たりしながら進んで行くんですね。
今日は先生という立場でしたが、わたしも本当にまだまだ始まったばかりです。やるからには「自分だけのイメージ、自分にしか撮れないイメージ」を目指したいです。

――ワークショップを行ってみて、いかがでしたか?
「はじめまして」の方でも、カメラと写真を通じてコミュニケーションをとれば、その方の何かが見えてくると思います。写真歴が長い、初心者であるに関わらず、参加者の方にもそれは伝わったのではないかなと思います。「わかる!」とすぐに分かり合える瞬間や、「そんな風に見えてるの?」という驚き、色んな人がいるからおもしろい。そんなことを改めて感じる1日となりました。ありがとうございました。

取材・撮影にご協力いただいた七咲さん、そして参加者の皆さん、本当にありがとうございました!

    UPDATE:
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    mudef

    一般財団法人mudef(ミューデフ)は、「Music +Design」が組み合わさってできた言葉。「音楽とART」を通じて、地球規模の課題を解決するために設立されました。
    「地球と人類が直面する宿題解決をちょっぴりでもお手伝いしたい。国境も言語も人種も超えるチカラを持つ音楽とデザインの特技を活かして!」そう考えるアーティストがmudefに集い、子どもたちのために、未来の地球のために、様々な活動を行っています。
    理事には、MISIAをはじめ、さまざまなアーティストが参加しています。