MISIAの里山ミュージアム

自然を感じて楽しむアート&音楽「MISIAの里山ミュージアム」【前編】

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ソーシャルグッドなイベントをご紹介するイベントレポート。
今回は2017年6月11日に石川県河北郡津幡町にある石川県森林公園にて開催された、自然を感じて楽しむアート&音楽イベント「MISIAの里山ミュージアム」についてご紹介します。

MISIAの里山ミュージアムってどんなイベント?

石川県森林公園の一角にあるMISIAの森「MISIAの里山ミュージアム」は、この豊かな自然の中で、アートと音楽を楽しみながら自然の大切さを学べる体験型イベントです。会場のMISIAの森は、歌手として活躍するMISIAさんが、理事を務める一般財団法人mudefの活動の1つとして、自然豊かな地で生物多様性の大切さを発信しようと、石川県や津幡町の協力を得て始めたプロジェクトの拠点でもあります。mudefは、音楽とアートを通した社会貢献を目指す団体で、昨年からMISIAの里山ミュージアムを開催しています。自然の中でアートや音楽を楽しむと同時に、森の豊かさや生物多様性の大切さを感じられる――。大人も子どもも満足できるこのイベントに、約1000人の参加者が集まりました。
GOOD!CREATOR編集部が取材した現地の様子をお伝えします。

快晴に恵まれたMISIAの森

JR金沢駅から車で30分ほどの山あいにある石川県森林公園。雨が降った前日と打って変わって、この日はお出かけには持ってこいの快晴となりました。自然の中でさまざまな体験が楽しめるとあって、開場時間の午前10時には多くの家族連れが列を作りました。体験や展示、地元の方によるふるまい鍋の提供など、MISIAの森全体を使って多様な企画が行われていました。

すぐに持ち歩けるエコバッグづくりとうちわアート

まず最初に目に入る建物は、受付があるインフォメーションセンター。
中ではデザイナーのとくりきあすかさんによる、エコバッグづくりとうちわアートの体験教室が開かれていました。

とくりきあすかさんは京都出身のグラフィックデザイナーです。デザイン事務所asugatic(アシュガティック)を立ち上げ、日常に笑顔とHappy をもたらすデザインやハートモチーフの商品を展開し、国内のみならず海外でも受け入れられています。
大盛況となった体験教室。とくりきあすかさんに、お話を伺いました。

――イベントに参加された経緯を教えていただけますか?
もともとMISIAの森のロゴをデザインさせていただいたのがきっかけです。昨年の第1回に引き続き、今回で2回目になります。

――今回のワークショップの意図や工夫について教えてください。
エコバックづくりは、ロゴデザインでもあるてんとう虫や森のマーク、それから草花や虫たちをモチーフにしたはんこを準備して、森にいる生物や植物のことを考えながら、子どもたちに自由に楽しく作ってもらえるように企画しました。去年に続いての企画でしたが、お昼前には満員御礼でバッグがなくなるくらい大好評でしたね。
もう1つ、今年はうちわアートというものをご用意しました。去年はすごく暑かったので、「うちわがすぐに役立つのでは」という想いもあり企画しました。前回は三角の旗をつないだ飾りであるガーランドをつくりましたが、今年はちょっと違うことがしたかったんです。小さな子どもから大人の方まで、年齢に関係なく誰にでも楽しんでほしいという想いで、うちわに塗り絵をするアート企画にしました。大きくなるに連れて塗り絵をする機会って少なくなると思うのですが、大人も子どももみなさん真剣に色を塗っている様子を見ることができて嬉しかったです。

――昨年と比べて今年のワークショップはいかがですか?
去年よりさらに多くの方が来ている気がします。2回目の開催なので今年も楽しみにしてくださったのかなと思います。特に家族連れがとても増えている印象です。

――参加者からはどんな反応がありましたか?
見た瞬間に「かわいい」って言ってくれて、その声を聞けるのが、一番うれしいですね。私がデザインしたことを知らない子どもたちが、はんこやうちわを見て真っ先に口にした感想が「かわいい」だと、とっても嬉しいです。普段はなかなか直接反応をいただく機会がないので、本当にデザイナー冥利に尽きます。

――自然の中での体験型イベントならではの気づきはありましたか?
「生物多様性の大切さ」というテーマは、自分にとってあまりなじみのない言葉でした。ですがMISIAの森のロゴデザインをするために、森のことや生物多様性について自分なりに調べてみたら、mudefさんやMISIAさんの取り組みにとても共感できたんです。
生物や自然などを守る行動ができればいいなと思っても、一人では難しいとも感じていたので、MISIAの里山ミュージアムという機会をいただけてよかったです。特にデザインの仕事で自然保護につながることがあまりなかったので、ありがたいなと思います。

――今回の企画を、今後にどうつなげたいですか?
ワークショップ形式で、みなさんの制作の様子を間近で見られるのは貴重な経験でした。「今回エコバックとかうちわをやったから、じゃあ次はどういうことをしようかな?」と工夫していくのが、自分の課題になると思います。お声がけいただけたら、来年もぜひ参加したいです!

――ありがとうございました! 続いて、うちわアートを体験した方の様子をお伝えします。

地元の情報誌「金沢情報」でこのイベントを知ったOさんご家族。自然の中で子どもが楽しめる体験があると知り、うちわアートに参加していました。息子さん、娘さんは木の緑色を思いっきり塗って楽しんでいたようです。この後のイベントには、さっそくうちわを手にして回るということです。

のびのびと音楽を聴ける、森の演奏会

インフォメーションセンターの外には、緑豊かなMISIAの森が広がっています。木漏れ日を受けながら少し歩くと、森の遊び広場とウッドデッキのステージが見えてきます。

森の遊び広場では的当てやつみ木などが用意されており、子どもたちが自由に遊べるようになっていました。

ステージ上では、期間限定バンド「森のモダンジャズバンドももも」によるジャズ演奏が行われていました。メンバーは金沢出身の大学生と恩師の5人で、今回のイベントのために結成されました。

――期間限定で結成されているんですね?
インターンシップで地元に戻って来ていて、このイベントで「世界の里山写真展」を開催している飯田義彦さんに、演奏をしてはどうかとご提案いただいたのがきっかけです。それからジュニアバンド時代の恩師と、友人のつながりで結成して、2週間で曲目を仕上げました。

――屋外、しかも森林公園の中での演奏はいかがでしたか?
こういった場所での演奏は、なかなかないので難しいです。外なので音が響かないし、風も吹くし。でもとても気持ち良く演奏できました。お客さんにもリラックスして聴いていただけたと思います。
私たちも森林公園にお邪魔することがなかったので、このような機会をいただき、演奏させていただけたのはありがたいことだと感じています。

――ありがとうございました!

SATOYAMAを知る、世界の里山写真展

森の遊び広場の近くにある「森のつみ木小屋」では、組まれたつみ木を利用するユニークな展示方法で、世界の里山写真展が開かれていました。撮影したのは、国連大学いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(OUIK)の研究員として活躍する飯田義彦さんです。今回の展示について、お話を伺いました。

――MISIAの里山ミュージアムに参加したきっかけは何でしょうか?
MISIAの森のプロジェクトは生物多様性や里山への理解を深める取り組みということもあり、国連大学の活動にも共通している部分が多く、今までも連携をとっていました。私がMISIAの森と関わりを持ち始めたのは2015年からになります。その年の秋に、OUIKのインターンシップ生が実施した森林公園での調査に参画したのが始まりです。今年は主催者からこのような展示の機会をいただいたこともあり、新たにインターンシップに来ている学生に特技を生かしたジャズ演奏をしてもらうことも提案しました。

――普段はどのような活動をされていますか?
研究者として、「生物文化多様性」という言葉を用いて石川県の魅力を評価する取り組みをしています。世界農業遺産やユネスコエコパークなどの国際ネットワークと連携を図ったり、海外の方と交流して石川県の魅力を世界に発信したりするような活動もしていますね。

――写真展についてご紹介いただけますか?
この写真展は私が各地で撮影した里山(SATOYAMA)や里海の写真を展示しています。石川県内をはじめ、阿蘇や京都、飛騨地方といった日本の写真だけでなく、アメリカのオレゴン州、マレーシアのサバ州、フランスのパリ、メキシコやスウェーデンなどの写真もあります。ここにある写真を見比べてみると、世界各地の里山里海に暮らす人々の生活を想像することができます。意外な共通点が見つかったりするので、見ている人にはそういう発見をしてもらいたいですね。

――こちらの青いフレームは何でしょうか?
これは里山フレームといいます。私が勝手に名付けたんですが。このフレームを通して見る森林公園の景色、これが最後の一枚の「写真」で全体の展示が完成するというわけです。

――来場者に伝えたいメッセージはありますか?
MISIAの里山ミュージアムは、石川県を舞台に自然や世界についても考えることのできる場なので、人と自然が関わる里山というところと、自分たちが住んでいる場所をよく知ってほしいと思います。誰もがその一員であること、自然と関わって暮らしている世界の人たちにも思いをはせてくれるといいですね。

――ありがとうございました!

ほっとひと息、めった汁

お昼時になると、地元の方によるメッタヤタラにウマイ「めった汁」がふるまわれ、数十人の長い行列ができました。
同じく森のつみ木小屋の近くで行われていたのは、森林公園内を歩いて採集した野草を、その場で天ぷらにして食べられる「森の野草料理教室」。野草の種類は専門家が見分けてくれるので、初めて挑戦した方でも安心です。

3人の娘さんと一緒に参加していたFさんにお話を伺ってみました。

お揃いの服装でイベントを楽しんでいたFさんと娘さんたち。午前中にエコバッグづくりをしてから、バンドの演奏を聴いたり的当てをしたりして料理教室に来ていたという充実ぶりでした。娘さんは初めて食べたヨモギが美味しかったそうです。久しぶりに来たというMISIAの森を満喫している様子でした。

野外写真展

さらに里山を進むと、野外写真展の会場があります。展示されているのは、「MISIAの里山ミュージアム2016フォトコンテスト」の全150点の応募作品。石川県の里山や里海を舞台に、生き物や伝統的な暮らしの様子を捉えた力作を見ることができます。

木々の間を縫うようにして展示されている写真に交じって、ハンモックがつり下げられています。寝心地を編集部が体験してみました。ハンモックに揺れながら、緑に囲まれてそよ風に吹かれる時間は、まさに至福のひとときです。森のきれいな空気でリフレッシュし、とても癒やされました。

「みのむしのきもち」になってみよう

森の遊び広場やつみ木小屋から少し離れたところには、「かも池」とつり橋があります。そのほとりでは、TAKI Smile Design Laboによる「みのむしのきもち」が開催されました。みのむしのきもちになれるという不思議なイベントは、子どもたちに人気のコーナーとなっていました。

子どもが入れる大きさの「みのむし」を制作したのは、藤井賢二さん。以前、GOOD! CREATORでも取材したクリエイターです。

――「みのむしのきもち」という展示に、どんな思いを込めているのでしょうか?
MISIAの森のテーマとして「生物多様性について考える」というものがあります。教科書を読んで勉強するような、理屈ではわかったとしても、真の理解とか問題解決は難しいと思うんです。じゃあ、どうすれば少しでも多くの人が生物多様性という問題に興味を示し理解できるか。そう考えた時に、僕はアートディレクターなので人を惹きつける見た目と、アイディアで森に行ってみる動機づけをする“仕掛け”をつくりたいなと。多様な生命が息づくこの森で「体験」することが一番の近道なんじゃないかって。それが形になったのが今回の展示です。

――子どもたちに大人気ですね。
ほとんど行列が途切れることなく、非常に楽しんでいるみたいですね。ただぶら下がってるだけなのに不思議なものです。

――みのむしの制作はどのように進められましたか?
コンセプトから形にしていく、見た目やデザインの設計は1週間くらいでした。実際に森に来て、ここでどんなことができるかと考えたときに、上からぶら下がるという「森との関わり方」がいいと思いました。その体験で、動物とか昆虫の気持ちになってみるような。そこで「みのむし」にして、あとは子ども向けに、視覚的に楽しめるようにデザインしました。
実はモチーフに選んだ「みのむし」は、今や絶滅危惧種になってしまったんだそうです。ちょっと前まで、きっとこの森にも当たり前にたくさん生きていた生命が、ちょっとしたバランスの変化で絶滅してしまう。そんな事実もあるということを知ってほしかったですね。生物多様性について考えるきっかけとして、どういうものをつくるかというのは、森を見に来なかったら思いつかなかったんじゃないかなと思います。

本体は、室内用のテント型のブランコを、中央の部分を浮かせるようにして作り直してもらいました。それに着色したスポンジを貼り、みのむしの完成です。

――今後の活動にどうつなげていきたいですか?
ライフワークとしてソーシャルグッドな活動に力を入れていきたいと思っています。ただ、自分自身は社会貢献とかそういうのの専門家ではない。クリエイターとして、より多くの人にアプローチしたり、良いアイディアを発信していきたいと思っています。「デザインという視点で考えるとこういうアウトプットはあります」ということを提案し、みんなが喜んでくれたり、何かの役に立てればいいなと考えています。

――ありがとうございます!それでは参加した方はどんな感想を抱いたのでしょうか。

金沢市在住のSさんご家族は、午前中からあちこちのイベントに参加し、「みのむしのきもち」も体験してみたそうです。2歳になるお子さんは、中が暗いみのむしに入っても泣かず、「せまかったけど、きもちよかった!」とご満悦でした。

インフォメーションセンターの近くには一足早く七夕の短冊が設置され、竹紙を使った短冊に子どもたちが願い事を書いていました。

「みのむしのきもち」の近くには、森の図書館が設置されていました。暑い一日となっただけに、日陰にあるこの図書館は参加者の良い休憩場所になっていたようです。

どの会場も、大勢の家族連れでにぎわっていました。なかでも子どもたちがのびのびと遊びを楽しんでいた姿が印象的でした。
後編では、実際に編集部が参加したワークショップをレポートします。

後編に続く

    UPDATE:
    イベントレポート
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    mudef

    一般財団法人mudef(ミューデフ)は、「Music +Design」が組み合わさってできた言葉。「音楽とART」を通じて、地球規模の課題を解決するために設立されました。
    「地球と人類が直面する宿題解決をちょっぴりでもお手伝いしたい。国境も言語も人種も超えるチカラを持つ音楽とデザインの特技を活かして!」そう考えるアーティストがmudefに集い、子どもたちのために、未来の地球のために、様々な活動を行っています。
    理事には、MISIAをはじめ、さまざまなアーティストが参加しています。