コラージュアーティスト Q-TA

Q-TA コラージュワークショップ体験レポート 「表現の引き算」を学ぶアートワーク【後編】

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2017年4月29日、東京の渋谷PoRTAL(ポータル)にて「Q-TA コラージュワークショップ」が開催されました。
Q-TAさんといえば、独特のシュールな世界観が魅力のコラージュアーティスト。ダークでポップでシュールな作品に惹かれるファンは後を絶たず、Instagramのフォロワーは約15万人に上ります。
一方で、ブランドビジュアルや装飾、本の装丁、CDジャケットのデザインなどを手がけるアートディレクターとしても活躍中。シュルレアリスムを独自の解釈で表現した作品は国内外でも高く評価され、「GUCCI」「Viktor & Rolf」など海外のアパレルブランドとのコラボレーションを果たしています。

今回はQ-TAさんがコラージュワークショップを開催すると伺い、GOOD! CREATOR編集部の2人が参加。クリエイターの仕事を肌で感じるべく人生初のコラージュ体験に挑みます。
前編ではワークショップの様子のほか、コラージュ制作の基本や初心者でも使えるテクニックを紹介しました。後編では講評会の様子と参加者へのインタビューを中心にお伝えします。

講評会

15時から始まったコラージュ制作は17時半に終了。あっという間の2時間半でした。最後は全員の作品をテーブルに並べ、講評会に移ります。

同じ素材を使っても、一つ一つはまったく異なる作品になっています。

まずは記念撮影。素材の使い方やハサミの入れ方など、ほかの作品を見て学ぶことも多くあります。

自分の作品を前に満足げな表情を浮かべる人もいれば、悔いが残るのか歯がゆい様子の人も。コラージュに慣れていない方は、だいぶ苦戦したようです。
「せっかくだし、作品のタイトルと工夫したポイントを一言紹介してもらおうかな」というQ-TAさんの言葉で、1人ずつタイトルを発表することになりました。

ここからは発表されたの作品の一部からタイトルや作者のコメントを紹介します。

タイトルは『居場所』。トランプの素材からキングやジャックの顔を器用に切り抜き、作品に配置しています。本来あるべき場所(トランプ)からキャラクターが飛び出し、異なる体を持つことで、「居場所によって人の価値もそれぞれ変わってくる」というメッセージを表現しました。作者は就職活動中で、「自分の居場所ってどこにあるんだろう」と感じた経験が作品のベースにあるそうです。

タイトルは『B』で、ハチの「Bee」と掛詞になっています。宇宙を渡りながらおもしろいものを採集していくストーリーを表現しました。注目すべきは空間の使い方。素材を対比させるように置くことで、主役を引き立たせています。Q-TAさんからも「空間の使い方が上手ですね」と評価されていました。

以前からTwitterでQ-TAさんをフォローしており、今回思い切ってワークショップに応募した作者。作品には『実験』とタイトルをつけました。脳から情報を取り出す様子や、人間の手がマネキンに変化するなど、ユニークな表現が取り入れられています。

鳥籠を掲げた男性が月に向かい立っているこちらの作品は、『月を割る』というタイトル。それぞれのパーツがバランスよく配置されています。作者は普段デザイナーをしていて、「パソコン上では大きさも位置も簡単に変えられるけど、アナログはそれができなくて難しかった」と感想を述べました。Q-TAさんからは「なぜ月を割るのか? その理由も表現できたらもっとおもしろくなるよ」とアドバイスがありました。

タイトルは『こうだったらいいな』。お湯に浸かったまま電話できるお風呂があったらいいな、お月さまに目がついていたらいいのにな、など、作者の夢を詰め込んだ作品です。チョウのパーツを谷折りにして羽を立たせることで、実際にチョウが飛んでいるような立体感を演出しています。

終わりにQ-TAさんの作品を紹介しましょう。タイトルは『俺のルイヴィトン』。パーツを記号的に重ねてルイヴィトンのVとLを表現しています。物語性よりもデザイン性を重視してつくられたコラージュです。

「コラージュは、こういう(デザイン的な)作品もありだし、みんなみたいに自分の気持ちや理想を表現するのもあり。そういう表現の振り幅の大きさがコラージュの魅力なので、今後も挑戦してみてほしいなと思います」

ところで、Q-TAさんは普段の制作で作品にタイトルをつけることはほとんどないそうです。では、なぜワークショップではタイトルをつけるのでしょうか。その理由を伺ってみました。「タイトルを選ぶ言葉のセンスまでがコラージュだから、あえて聞いています。やっぱりみんな、タイトルのあとに少しだけ作品について説明するでしょ。それを聞いて受け手はなるほど、と思うかもしれない。だけど、それは『言葉で補完しなければ伝わらない作品だった』っていうことなんですよ。タイトルや言葉で意味を補完するのではなく、意味を増幅するするくらいが理想ですよね。そしてキャッチーに。とは言っても今回僕が作った作品はちょっとキャッチーに走り過ぎた感がありますけど(笑)」

たしかに講評会では作者の説明に納得する一方で、「言われなければ気づかなかった」というポイントが多かった印象でした。それに引き換え、Q-TAさんの作品はタイトルと絵柄がぴったりとはまっていてるうえに、じっくりと観察していると「こんな意図があってこの表現にしたのかな」と想像をかき立てられる部分もあり、余韻を感じさせる作品です。

自分の作品を手に集合写真を撮影。お疲れ様でした!

ちなみに、ワークショップ後には有志による交流会が開催されました。Q-TAさんの仕事にかける熱い思いや制作の裏話を伺えるとあり、主婦や会社員のほか、クリエイティブな仕事で活躍する方、デザイン・美術を専攻する学生さんなどさまざまな人が参加しました。学業や仕事に情熱を持って取り組んでいる方が多く、Q-TAさんを囲って和やかに、時に真剣に語り合う場面が随所で見られ、各々いい刺激を受けられたようです。ワークショップに参加する際は、ぜひ交流会も含めての参加がお勧めです。

 

ワークショップを終えて

盛況のうちに幕を閉じたQ-TA コラージュワークショップ。ここからは参加者に伺った感想やコメントを紹介します。

1.CHOKOさん(ご職業:着物ディレクター)


普段は着物のデザインやディレクションを手がけているCHOKOさん。仕事ではクリエイターやデザイナーとコラボレーションすることも珍しくないそうです。

――ワークショップに参加した理由を教えてください。また、コラージュ制作の感想をお願いします。

Q-TAさんの作品を見ていて、自分でも何かつくれたらおもしろそうだなと思いワークショップに挑戦しました。コラージュは初めてで、すごく難しいなと思います。だけど、取っかかりを掴むと方向性が見えてきました。

――作品のタイトルやテーマを教えてください。
タイトルは『遅刻』です。左下にヘビがいて、真ん中に時計があって……ヘビと遊んでいたら時間に間に合わなくなって、置いていかれてしまった様子です。ギリギリで作業するときの気持ちが反映されています(笑)。

なお、この日は亀甲柄の着物にQ-TAさんデザインの帯を合わせています。帯留めのギターがクマの柄と重なり、まるでギターを弾いているように見えますね。これもコラージュといえるのではないでしょうか。

 

2.M.Yさん(ご職業:会社員)

CHOKOさんに誘われ初めてワークショップへ参加したM.Yさん。キュートだったりグロテスクだったりと、Q-TAさんの型にはまらない作風に魅力を感じているそうです。

――ワークショップに参加してみて、いかがでしたか?
制作では自分なりのストーリーをつくり、バランスを考えて配置することに難しさを感じました。でも、素材に切り込みを入れるなどのテクニックを教えてもらうことで、「そういう表現もアリなんだ!」と思わぬ発見があったりして。コラージュのおもしろさも感じました。

――コラージュ制作を通して、普段の生活や仕事に役立ちそうだなと思ったポイントはありますか?
Q-TAさんが言っていた“引き算”の考え方ですね。あれは例えば部屋のインテリアとか、生活のなかでも役立ちそうだなって思います。最近物が増えがちなんですけど、空間を活かすためには盛りすぎないことが大切だな、と改めて感じました。

 

3.ミホさん(ご職業:会社員)

 

Q-TAさんの叙情的な世界観に夢中だというミホさん。裁縫が好きで、初めてのコラージュ制作を楽しみにしていたそうです。

――コラージュに初挑戦した感想を教えてください。
最初はまったくイメージが沸かなくて、何から取りかかればいいのかわかりませんでした。お裁縫でも枠のなかいっぱいに使うことが多かったので、コラージュで“引き算”を意識することは難しかったです。でも、コラージュ自体はすごく楽しいです。手軽にできるので家でもやってみたいなと思いました。

――作品のタイトルやテーマを教えてください。
タイトルは『アイドル』です。とにかく可愛いものやアイドルが大好きなので、可愛いものの集合体をつくりました。右上にあるのがアイドルのプロデューサーなんですけど、プロデューサーはアイドルとは違って華やかな世界にいられないので、それを色の対比で表現してみました。

コラージュ初心者も含めて皆さん思い思いに自由な表現を楽しめたようです。続いて、GOOD! CREATOR編集部から参加した三輪さん、桑原さんにも感想を聞いてみました。


4.三輪さん

普段はクリエイター業界に特化した人材紹介企業で、キャリアアドバイザーを務めている三輪さん。コラージュ制作ではQ-TAさんにアドバイスを求めるなど積極的に取り組み、最後の最後まで諦めず工夫を重ねていました。

――今回は編集部の代表としての参加でしたが、いかがでしたか?
GOOD! CREATORにご登場いただくクリエイターさんの仕事を体験するという、とても貴重な機会でした。
「周りの人の作品を見て、いいなと思ったらバレないように真似をしろ」というQ-TAさんの言葉が印象に残ってます。やっぱり、人から学んで吸収してから自分のものにできるんですよね。それはコラージュだけでなく仕事でも何でもそうだから、新入社員の頃のフレッシュな気持ちを思い出しました。

――ワークショップで印象に残った点などはありますか?
(作業時間が)残り5分です、と言われたとき、私の作品は素人でもわかるくらい残念なものでした。そこでQ-TAさんに泣きついたところ、「ここにパーツを足すと、空間が広がるよ」とアドバイスをもらったんです。正直「ここに!?」と思うような意外な場所だったんですが、パーツを足してみると不思議とそれらしい作品に変化しました。

――作品のタイトルやテーマを教えてください。
タイトルは『同級生』です。私は普段、友達の誕生祝いのカードをつくったりするんですけど、そういうテーマのあるものしかつくったことがなくて。それで「自由につくって」と言われて何を作ろうか考えたとき、結局いつものテーマに戻って、この作品になりました。

――これからワークショップに参加してみたい! という方にメッセージをお願いします。
私はワークショップ後の交流会にも参加したんですが、そこにいた学生さんたちが「これをやりたい」と明確な夢を持っていることに驚かされました。出会った皆さんの夢が叶うよう、心から応援しようと思います。Q-TAさんがとっても気さくで楽しい方なので、交流会があればそちらの参加もお勧めします!

5.桑原さん

Web制作会社にライターとして勤め、コラム記事などを執筆している桑原さん。今回は新人クリエイターを代表してワークショップに参加しました。

――桑原さんはクリエイティブ職に就いていますが、ワークショップで何か感じたことはありますか?
普段の仕事は記事のテーマや表記のルールなどが決まっていて、そのなかで文章を組み立てていきます。一方、ワークショップは時間制限はあるけれど、テーマやコンセプトは自分で練っていかなければなりません。だから、モチーフにとらわれず切る、よくわからない生物をつくるなど、「既存のルールを破る」ことがとても難しかったです。普段の自分がいかにルールに縛られているのかを痛感しました。

――ワークショップで印象に残った点はありますか?
ラージュは切って貼るだけと思っていたのですが、意外と立体的な作品をつくれるんだと知って驚きました。「切り絵とはどう違うんだろう?」と思っていたので、その違いを学べてよかったです。ただ、私の作品はどちらかというと切り絵になってしまった感じがあるので……ぜひ次のワークショップに参加してリベンジしたいです。

――作品のタイトルとテーマを教えてください。
タイトルは『黄昏』です。作業の後半で慌てて方針を変更したので、かなりパーツの少ない作品になりました。私自身も殺風景だと感じてたんですが、Q-TAさんには「シンプルだけどまとまっているよ」と優しくフォローしていただきました。

――これからワークショップに参加してみようかな、という方に向けてメッセージをお願いします。
コラージュのテクニックやおもしろさだけでなく、Q-TAさんの話から学ぶこともいっぱいありました。特にコラージュ未経験の方こそ得るものが大きいと思うので、ぜひ挑戦してみてほしいです。

 

まとめ・表現ではなく考え方としてのコラージュ

最後に、Q-TAさんからこのワークショップを開催する意図を伺いました。

「普段の生活のなかでも役立つ考え方を学んでほしくて、ワークショップを開催しています。
例えば、朝起きたときに『朝飯はこれで、昼飯はこれで、夕飯はこれを食べる』と完全に決めている人はいませんよね。朝何を食べたかによって昼のメニューが変わってくるし、その延長に夕飯のメニューがあるわけです。僕たちは無意識に繰り返しているけど、一歩先の物事と、手前の出来事は関係しているんですね。
でも、これを1日という枠組みのなかで逆算することで、『夜は焼肉食べるから、朝昼はちょっと控えよう』とか、一手先を読んで今の自分を動かすことができる。コラージュも同じです。

コラージュでは、素材をぱっとみたときに完成形が見えるのが理想。そういう完成形を掴む感覚と、目の前にある存在や偶然に刺激を得ることを体験してほしい。さらに、決まった枠組みのなかで最低限の手数を逆算して、リアルタイムでベストなかたちをどんどん探っていく感覚を養ってほしい。これが“コラージュ的思考”ですね。この感覚を身につけると、いろいろなことがもっとおもしろくなるよ、世界が広がるよ、というメッセージを伝えています」

気さくな人柄で場を和ませることもあれば、クリエイティブの未来について熱く語ることもあるQ-TAさん。ワークショップではコラージュの技法だけでなく、その人柄や仕事に対する姿勢から学ぶものも多くありました。3時間という短い時間ながら、大変有意義なひとときを過ごせた方も多かったはずです。ぜひ、このワークショップで学んだ「コラージュ的思考」を普段の生活に活かしていきたいものですね。

取材・撮影にご協力いただいたQ-TAさん、そして参加者の皆さん、本当にありがとうございました。

    UPDATE:
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    Q-TA

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    Q-TA(きゅーた)
    アートディレクター / デザイナー / コラージュアーティスト
    シュルレアリスムを独自の解釈で表現するファッション性の高いポップなコラージュ&ビジュアル作品で、GUCCIのアートプロジェクト「#GucciGram」、Viktor & Rolfの2017SSコレクション、ラコステなど海外アパレルブランドとのビジュアルコラボレーションをはじめ、ディズニー映画「Alice Through the Looking Glass」のInstagramキャンペーンへの作品提供、flumpool「FREE YOUR MIND」のMV、資生堂マジョリカマジョルカ「ストライクな瞳」CMなど、CDジャケット、雑誌、装丁、装飾デザインなど国内外で幅広く活躍する。